「原発危機」が進行する中で、次々に新たな事態が生まれています。
その一つが、基準値の1万倍を超えるという途方もない放射線高濃度汚染水が海に大量に流れ出していることです。これは、原子炉の圧力容器か格納容器が破損し、そこから高濃度の放射線物質が流れ出していることを意味し、それが海水を媒体として拡散していることを明らかにしたものです。
周知のように海水は連続体ですので、それだけ確実に拡散しながら放射線物質を遠くまで運び続けているのです。
当初の発表では、これがどこからきているかが判明しないとのことでしたが、例によって、この問題でも「小出しの情報開示」がなされました。
まずは、タービン建屋内の地下室に高濃度汚染水が滞留していることが示され、その次には、その建屋外のトレンチ内に汚染水があふれる直前まで溜まっているとのことでした。
しかし、一方で、その発表前から海洋の放射線値が高いことが明らかにされていましたが、それについては、「海の水は拡散するから」と、例によって素人のような方の説得力のない説明がなされていました。
そして、ようやく、原発近隣の海水の放射能汚染の測定地も発表されるようになりました。
あれだけの放水と冷却水投入を行っているのですから、それらの汚染水が海に流出していくことは当然のことと予想されていましたし、その防止策を予め施しておく必要があることは、ある意味で当然のことでした。
さらに、原子炉内での破損がある場合には、そこから海洋や地下水に、その汚染水が流れ出すことは、だれでもすぐに予想できることでした。
残念ながら、最悪を予想し、最善を尽くす、これが実現できていないことが、この汚染水問題でも証明されてしまったように思います。
さて、海への流出において、その流出部分が発表されたときも、最初は、コンクリートの割れ目が地震で起き、そこから汚染水が流れ出ている可能性があるとの報道のみがなされていました。
問題は、それが全体の漏水の1か所にすぎないこと、そして、そこに流れ出している汚染水の量にあります。
前者については、目に見えている部分は、その分の対策が可能ですからまだなんとか対応できるのですが、最大の問題は、目に見えないところにあります。おそらく、それが地下へと流れ出している可能性があり、そうだとするとさらに重大な問題が起こる恐れがあります。
これも水を媒体としていますので、確実に放射線物質を含む液体が周囲へと拡散していくからです。
「周囲へ拡散していく」ことは、それで拡散されて濃度が低下していくから問題ではないということは、とても愚かで低次元の見解ですが、問題は、それが大量に拡散して広がっていくことにあります。
しかも、その量が半端な量ではなく、大量であることに重大な問題があるといわざるをえません。
本日公開された写真によれば、たしかにコンクリートの割れ目から大量の汚染水が流出していました。
この写真を見て驚きました。それは、大変な量の汚染水が直接海に流れ出していたからです。写真だけでの判断ですから、この流出量を正確に見積もることはできませんが、おそらく毎分1立方メートルはある流出量だと思いました。
これを1日分に換算しますと、約1400トンになります。原発事故が起きてから20日のうち半分の期間、この量が流れ出したと考えますと、じつに1万4000トンの汚染水が流れ出したことになります。
この流出が一部であるとしますと、もしかしたら、全体としては、この数倍が海や地下水に流れ出している可能性があるのです。
これは、明らかに「拡散しているから問題がない」のではなく、拡散しているから問題なのです。
この流出は、原発の最終処理まで続く恐れがありますので、それこそ5年以上も続くことになる恐れがあります。
こうして考えていきますと、さまざまな代償を払わねばならない、そして、それを払うまでに、「最悪を予測し、最善を尽くす」、この科学技術の力が試されることになるように思われます(つづく)。
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