大変うれしいことがありました。今回の地震と大津波の災禍を受けたSさんから電話をいただいたからです。

とても、しっかりした声で語りかけられ、こちらが「何といったらよいの」と、一瞬こちらが戸惑うほどでした。

このSさん、お兄さんとともに、「養殖カキづくり」においては名人の腕前をもっています。それから、お兄さんの方は、そのカキ養殖に加えてウニ取りの名人でもあり、かつて、その秘訣を教わったことがあります。

かれがいうには、そのすばらしい、そしてすごい味のウニは、潮の流れが岸壁に衝突するところに生育していて、そこではマイクロバブルが常に発生していて海が白くなっているというのです。

天然において、マイクロバブルで海が白くなるところにはウニだけでなく、イセエビの大群が生息していたという話をダイバーカメラマンのKさんから、とっておきの話として聴いたこともありました。

さて、そのウニ取り名人の秘訣とは、「目にある」とのことでした。ウニ取り名人大会では、決められた時間内に何匹のウニを獲るか、そして、その重量で競い合いがなされるそうですが、この競争は、「目の良さ」で決まるというのです。

ウニの捕獲は、水深が5~6mのところで竿を使って獲るのだそうですが、そのときに船の上からウニを探し出し、間髪をいれずにウニを見ながら獲る、ここに極意があるとのことで、なるほど、これは名人でないとできない技だと思いました。

それから、弟の方のSさんは、見事なカキを育てる方で有名であり、豪放闊達、その率直な意見は、今回の災禍の後でも際立っていました。

「政治家は税金で養われているのだから、もっとしっかりしろ! どんなことがあっても水産業を復活させなければならない」と強調されている姿が放映され、私も激励されたと思いました。

また、このSさんは、カキにマイクロバブルを与えているときに、カキがマイクロバブルで気持ちよさそうに口を開けていたので、思わず、自分もカキの気持ちになって、海に飛び込み、マイクロバブルを味わったという「逸話」の持ち主でもあります。

そして、その日は、マイクロバブル海水浴の後に、いつもよりぐっすり寝たそうですが、マイクロバブルの睡眠効果がSさんの身体に及んだ結果の眠りを体験されたのでした。

ところで、どうして、そのSさんから電話があったかについては、次の事情がありました。

じつは、ある試験研究において、至急、地元のみなさんに連絡しなければならいことが起きて、その連絡をとろうとしたのですが、電話とファックスが不通になっており、各支所においても連絡ができないままで、どうしよう路頭に迷い始めていたからでした。

当然のことながら、このSさん兄弟にも連絡を取らせていただきましたが、これもなかなか通じなかったので、困り果てていました。

そこで、まず、文書を先に送ろうと思い、郵便局に行くと、「ここは、もしかしたら配達できずに返ってくるかもしれません」といわれ、これでさらに不安になりました。

「なんとか通じる方法はないのか」と思案していて、「そういえば、Sさんが無事だったというブログ記事を見たことがあった」ことを思い出し、それこそ藁をつかむ思いで、そのブログ見つけ、なんとか連絡する方法はないかと、コメントさせていただきました。

そのブログのタイトルが、「なったぎすんな」というものでした。これは、どのような意味なのかと思いながら、それを探索する余裕もなく、コメント記事を書かせていただきました。

そしたら、しばらくして、Sさんから電話がかかってきて、それこそ小躍りしながら受話器をとったしだいでした。

その後、ブログの執筆者からもメールでの連絡があり、この親切に感激しました。すぐに、Sさんに連絡を取っていただいたそうで、この善意を大変うれしく感じました。

どうも、ありがとうございました。

後で、ゆっくり、そのブログ記事を読ませていただきました。そして、「なったぎすんな」という意味は、岩手弁で、「傲慢になるな」ということであることを知りました。

とてもすてきな言葉です。これから、この言葉を胸に刻んで粘り強く尽力させていただきます。

どうか、同じ東北出身の作家の言葉を借りて、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、そして、ふかいことをおもしろく」という精神でいきたいと思いますので、みなさま、どうか、よろしくお願いいたします。

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