孟子の有名な言葉に、「天の時は、地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」があります。

これは、「天のもたらす幸運は、地勢の有利さには及ばない。しかし、地勢の有利さとても、人心の一致には及ばない」と解釈されているようです。

また、この言葉は、戦乱が続く、いわば非常時に考えられたものであり、世の君子たちは、この「天の時」、「地の利」、「人の和」が整った時に、戦を行い、必ず勝ち続けたのです。

さて、この非常時の「人の和」が、今の日本で根本的に問われています。

あの東日本大震災が起きて2ヶ月が過ぎ、その復興支援の基本的なあり方が問われるようになってきたからです。

あっという間に、生活の場所である家屋と仕事場が流され、壊滅してしまいました。これは単に生活や仕事場における物質がなくなったという意味に留まらず、精神的にも生きる展望や意欲を根こそぎ奪い去ったのでした。

このとてつもない災禍は、それこそ、人々の命とともに、精神生活のほとんどを押し流したのでした。

そして、この根こそぎの奪取に加えて、原発危機が、それこそ先を見えないようにして、さらに事態を深刻な状態へと押しやっています。

あまりにも、発表がなされる情報と深刻化するリアルな状況が交差し合い、それこそ唖然とするとともに、これは容易ならざる事態だと思わざるを得ないのです。

あるまじめな技術者は、今の事態は、常に放射能汚染が私たちの生活と直接結びついていることを意味するといっていましたが、本当に、その通りなのですね。

こうなると、日々変わる新たな事態に唖然とするだけで済ますとか、やはりそうだったかと納得するだけではいけないような気がしてきました。

いかなる事態になろうとも、そこから何を学ぶのか、そして、その深刻な事態を受容するだけではなく、そこからいかに脱出し、たくましく乗り越えていくか、それらを真剣に考えていく必要があります。

「鋭く、大きな直観(intuition、ひらめき)」は、そのために存在するのであり、この直観を研ぎ澄ます必要があります。

天が、このような状況を与えたのであれば、そこから何を学び、どう生き抜くのか、そのことを、鋭く、大きな直観でもって考えていく必要があるのです。

この「鋭く、大きな直観」とは、あの小説『日本沈没(小松左京作、1973年)』において登場してきた田所雄介博士がいった言葉です。

彼は、見事に、その日本沈没を予測し、結果として何百万人という人々の尊い命を救いました。

徹底した海底調査、大陸移動説、地震予測シミュレーション法を用いて、それこそ全身全霊をかけて導いた結論が「日本沈没」でした(つづく)。

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