「そうですね。あれから、その小さな泡の快進撃が始まりました。あれは、凄まじかったですね」

「何といいましょうか、心配していた故郷の東日本地方において、暗闇の中に燦然と輝く蝋燭の一灯のようなものでしたね。久しぶりに、スカッとしました」

「なにせ、マイクロバブルを120機も並べて一斉に海の中に発生させるという、だれも考えてもみなかったことをやったのですから、それを見たみなさんは、それこそ腰を抜かすほどの驚きでした」

「その小さな泡が海の中で発生している光景は、すばらしくて迫力がありました。あれを撮影したカメラマンは、とても気分がよかったはずです。それから、その素晴らしさに、相当興奮されたのではないでしょうか!」

「それから、その小さな泡に、カキやホタテが見事に反応しましたね。その成長促進によって多くの地元漁師が喜びました。私も、私もと、その発生装置の周辺には、漁師の方々が続々と集まってきました」

「やはり、東日本は漁業と水産業で成り立っていますので、彼らの顔が明るくなることが一番でした」

「その後も、この小さな泡は活躍し続け、それこそ燎原の火のように広がっていきました。それを思いますと、震災復興のなかでは、一際輝いたもののひとつになってのではないでしょうか」

「人の智恵といいましょうか、技術のすばらしさがこんなところにあったのかとつくづく思い知らされました。おっと、どっこい、知恵は生きている、と思いました」

「それから、私どもの研究所においても、この小さな泡に関する研究が本格的にはじまりました。私も、すばらしいシーズを得たと思い、それこそ真剣に取り組んできました。

その結果として、やはり、この小さな泡は、とてつもないもなくすばらしいものであると確信するようになりました」

「これはやってみる価値がありましたね。私の本来の仕事にも少なくない影響を与えました。それこそ、もっと早く知ることができたならと後悔するほどになりました」

(つづく)

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