「約10年も前の東日本大震災が起きた夏に繰り広げられた小さな泡の花、それは、真っ暗な空に打ち上げられた大玉の花火のようでした。それにしても、きれいでしたね」

「それに、カキやホタテが喜んだこと、精一杯口を開けて、その喜びとここちよさを表現していましたね。

このような貝もヒトとあまりDNAにおいては違いはないのですから、同じように喜んでもふしぎはないですね」

「それから、あの泡でカキやホタテがよく太りました。そのことで現地の漁師のみなさんに希望を持っていただいたことが何よりも大きかったですね。

海の環境をよくすれば、それこそ小さくない冨が得られる、だから海が大切なのだということがよく理解されたことが重要でした」

「しかし、東日本全体としては、なかなか復興が進みませんでしたね。とくに、M県では、『特区』という指定の元に、水産業に大手企業が参入し、その結果として、個々の漁師のみなさんは追いやられてしまいました。

この問題は、地元の漁協のみなさんも心配していたことですが、実際には、その心配の通りになってしまい、結局、復興は何だったのかということを考え直さざるをえなくなりました」

「この水産業の変化と個々の小規模経営の漁業の衰退が、地元の農業にも重大な影響を与え、農家の方々はますます苦しくなりました。

それらの周辺の中小企業の方々も同じく、その経済的自立はなかなか実現されませんでした」

「すでに、10年前から、ノルウエーの事例がある。ここでは中小零細の水産業がほとんど衰退し、大手ばかりになってしまったのですが、これとよく似たことが、この東日本でも起こってしまいました。

とても残念なことですが、それが、その後の10年だったのだと思います」

「それは、そうなのですが、しかし、あの小さな泡の研究については、本腰を入れました。

私どもの研究所のスタッフのほとんどが、これを重要なテーマとして取り込み、それこそ実践的な開発課題にさせていただきました」

「そうですね。この位置づけがなされたことが、今から思えば非常に重要でした。

昔、キリキリ総合病院で取り組んだことは、それが少々奇抜すぎたので、その成果で世間をあっと言わせることはできたのですが、その脇が甘かったと反省しています。

結局、長続きせず、その壮大な構想も実現しませんでした」

「その反省も踏まえて、今度は、しっかり取り組む課題を検討し、スタッフも整備し、その教育にも取り組みました」

「なにせ、小さな泡とはいえ、最先端の科学技術ですから、しかも、生活や産業に密着し、積極的にもそれらとも融合できるのですから、こんなよい材料とテーマはありませんね。

鬼に金棒とはこのことですよ。キリキリ総合研究所も、この金棒を持つ必要があります。

この金棒は、小さな泡のことですので、ふわふわした柔らかいものですが、意外と金棒よりも強力になるのですから、これまたふしぎなものですね。

この泡、おもしろく、ふかいのですよ!」(つづく) 

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