生後4か月が過ぎ、緑子はいとも簡単に寝返るようになり、さらに自由自在に仰向けにもどることもできるようになりました。

それから、この間の特徴は手を動かすようになったことがあります。それまでは、手があまり意識的に動かず、その代わりに足の方がよく動いて、それが脳の刺激を促すための主役でした。

保育の専門家によれば、足の親指の刺激や身体をねじる刺激が脳に対して重要だそうで、それが、この緑子にも丁寧に適用され、訓練されていました。

こうして脳の発達が進み、今度は手をよく動かすようになりました。しかし、腹ばいになったときには、まだ、足を蹴って前に進むまでには至っていません。足の親指を使って床を蹴ることができていません。

それから、球の形で、それを手でつかみやすくした網の目状になったおもちゃをよくつかむようになりました。それをつかんでは、口に持っていき舐めようとします。

自分の指も、口に入れてよく舐め、よく吸おうとしています。

さらに、タオルや服、コード類など目の前にあるものをつまもうと手を動かします。

こうなると、手足を活発に動かす赤ん坊への変身を遂げているようです。

それから、脳の発達がたくましくなされていることの証左は、その表情の豊かさや声の出し方にあると思っています。脳の発達が人間らしさを生み出しているのです。

テレビ電話であっても、目が合うと、にこっと笑えるようになりました。そして好きな歌をじっと聞き入るのは相変わらずのことです。しかも、それに合わせて声を出し、唄うのです。

それこそ、指を口に入れながら、よだれを垂らしながら、声を出して唄うのです。言語を発する脳の発達までには至っていなくても、ああ、ううと声を出して聞き入る歌に反応するのです。

そして、その歌に対する集中力がますます増しているような気がします。

また、ごく最近の特徴は、おしめを替えるときに、両手でそれぞれの足の指をつかむようになりました。

これは、どうぞ、おしめを替えてくださいというポーズになりますので、母親はいとも簡単に、その作業ができるようになりました。

手足が連動し、これも脳を大いに刺激しているのだと思います。

これらには、生まれたての緑子から、赤ちゃんにみごとに変化しているヒトの姿を垣間見ることができ、大人の私たちも、それを眺めては喜び、励まされます。

おそらく、日本中には、このように元気に見事な発達を遂げている赤ん坊がたくさんいて、多くの方々を励ましているのだと思います。

しかし、それとは反対に、大いに気になることもあります。

それは、わずかとはいえ、重大な影響を後々に及ぼしかねない放射能汚染物質が、知らず知らずに降り注いでいるという現実があることです。これから目を背けるわけにはいきません。

チェルノブイユ原発事故の時は、8000kmをわたって、その灰が地球を2度周り、その2回とも降り注いできたそうです。

それと同じことが、今回の福島原発事故においても起ころうとしており、その沈静には、今後数年間もかかるようで、その間も莫大なお金を通夜して、それこそ原発を介護していかなければならないのです。

こうなると、チェルノブイユ原発から放出された放射能の総量さえ、軽く超えてしまうという、じつに罪深いことが起こってしまうのです。

それから、それに費やすお金は約50兆円といわれています。

国家の1年の予算に近いお金が費やされても、それは、その原発を鎮静化させて補償をおこなうことだけに使用されるお金なのです。

この緑子たちは、このような負の遺産を背負って生きていかねばならないのです。残念ながら、それが今起きている日本の現実なのです。

この緑子のために、大人たちは、もっとしっかりしなくてはいけません。もっと明るく豊かな日本にしていく必要があると思います(つづく)。


大成京子CD『虹のかなたへ』より「 昴」

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