2000年の3月より、北海道噴火湾でのホタテ養殖改善の研究開発事業が始まりました。

この噴火湾は、広島江田島湾(水深20m)よりも広くかつ深い海(40m)です。そしてホタテの筏も大きく、かつ長いものでしたから、そのことを考慮して装置の設計をすることが求められました。

そこで、広島で用いたM2改良型(カキ筏のなかに垂直に吊るすために、そして横方向に広げるために、装置の下部に円盤状の衝突板を取り付ける工夫をしたタイプ)から、M3型と呼ばれるステンレス製の装置を開発しました。

これを海水用水中ポンプに2機配備しました。この改良は、マイクロバブルを一方向に噴出させることによってより広く拡散させるために工夫でした。

また、噴火湾では海が荒れることもあり、ステンレス製にして丈夫にすることの配慮もなされました。

この装置を噴火湾の水深15mの位置に入れ、マイクロバブルバブルの出具合を水中カメラで観察し、マイクロバブルが問題なく発生していることを確かめました。

同時に、陸上の水槽内でも、M2型を改良したステンレス製のマイクロバブル発生装置の配備もなされました。

これは、稚貝の分散や耳吊り作業時の貝の斃死防止に威力を発揮しました。

結果として、約2倍の成長促進と、それらの作業時におけるホタテの大量斃死の防止が完全にできるようになり、さらには、ホタテのグリコーゲンが増加して、その肉質改善もなされました。

これらの飛躍的な改善の基礎に、上記のようなマイクロバブル発生装置の改良と工夫があり、装置の進化がなされました。

当時、漁業関係団体の幹部の方が、次のようによく言われていました。

「これまでの漁業の技術開発においては、先端技術が開発されても、それが回りまわって、それこそ最後の段階でようやく、漁業の分野に適用されるという歴史を繰り返してきました。

ところが、先生は、マイクロバブルという最先端技術を、いちばん先に漁業に適用してくださいました。これはとてもありがたいことです」

これに対して、私は、こう返答していました。

「そう言ってくださって、とても光栄です。私には、その順番は関係なく、求められているところに、すぐに使うことが大切だと思っています。

それから、海水マイクロバブルは、淡水のマイクロバブルよりも数倍の効果がありますので、海に適用することの方が成功する確率が高いのです。この利点を発揮させることをおろそかにするわけにはいきません」

こういうと、彼を含めて漁民の方々も大変喜ばれていました。

それだけ、マイクロバブル技術は海に適しているのです。しかし、私を含めて、この海への応用問題、さらには海水マイクロバブルの科学的解明が意外と進んではいません。

なぜでしょうか?

ここにも、重要な問題の所在があるように思います(つづく)。

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