緑子に劇的な変化が起こりました。その生後100日を過ぎて120日の間で、新たに出てきた特徴は、手と口を使い始めたことでした。

たとえば、抱かれているときに、手を差し出してこちらに来るように促すと、何回かの呼びかけを経て、ようやく、それを理解し、わずかに手を動かす、これがその時の様子でした。

この時には、まだ、ぬいぐるみやおもちゃを手でつかむ力がなく、また、それらを掴んでもすぐに手から離してしまうことが続いていました。

ところが、脳の発達に伴って手がよく動くようになってきました。それから、自分の呼びを含めてつかんだおもちゃや布を口の中に入れて確かめるようになりました。

それから、本人にとって次の3つの画期的なことが起こりました。

①100日で寝返り、もとに戻れるようになりました。

②124日目に、寝返った後に前に進むようになりました。這い這いまでには至りませんが、頭を床にくっつけて足で蹴りながら前に進むやり方を見出したようでした。

③仰向けになって自分の両足の指を両手で掴めるようになりました。

いずれも手足の動きの発達が重要な役割を果たしていました。

その結果として、さらに顕著な特徴は、意識的に物事を掴む、口に入れる、触る、反応する、これらの現象がより頻繁に出てきたことにありました。

こうして、手足を積極的に活用することによって脳の発達をもたらし、より人間らしい習得を行っていく姿にはすばらしいものがありますね。

また、その緑子が歌を聞くのが好きであることを、これまでも紹介してきました。これがますます進み、より確かになっています。

好きな歌は、相変わらず「ぞうさん」と「森の児山羊」です。この歌を聞かせると、指を口の中に入れて聞く、お決まりのポーズが現れます。

さて、この間で、最も驚き、感動したのは、寝返りをした後に、頭を下げて前に進み始めたことでした。頭を上にあげた姿勢では、足で床を蹴ることができません。

床に頭をくっつけて、後ろで足の親指を立てて蹴ると、尻が上に上がり、身体の重心が頭の方に移行し、それによって前に進むことができるのです。

この方式で前に進めることをある日突然に身に付け覚えてしまったようで、最初は喜びながら前に進んでいました。

その姿勢を保ちながら長く続けることは相当の体力が要りますので、休み休みで時間をかけてゆっくり前に進みましたが、立派なのは、それをすぐには諦めずに、ひたすら前に進むことに挑戦し続けたことでした。

その進んだ距離は約2m、それに要した時間は約20分間、これは緑子にとって長征に等しい大旅行だったのです。

さすがに、最後の方では、この姿勢を保つことがつらくなってきたのでしょうか、しきりに声を出して、何とかしてほしいという訴えをしていましたが、それでも母親は、「頑張れ」といって手助けをしませんでした。

そして最後には耐えられなくなって泣きそうになりましたが、そのときに自分でくるりんと仰向けになり、これで楽なポーズに戻ることができました。

頭を下げて、床を蹴り、ひたすら前に進む、この姿は、私にとってとても感動的なシーンで、小さくない励ましとなりました(つづく)。

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