先ほど大船渡のSさんに電話し、9月前半の訪問と計画の話をし、了解をえることができました。

期待の「マイクロバブル発生装置104機」は本日も順調に動いているそうで、今もなお、大量のマイクロバブルが発生し続けています。

さて、日本の閉鎖海域について少し説明を加えておきましょう。

ざっと、日本全体を鳥瞰しますと、それぞれの閉鎖海域には固有の特徴がありますが、それらに共通することは、閉鎖海域の幅や奥行きにに対して、その水深が非常に小さいことです。

すなわち、極めて広いわりにくに浅い、これが共通の特徴なのです。たとえば、新聞紙の横の長さを大船渡湾の鉾幅としますと、その深さは1mmにも満たない長さになります。

このように浅い海では、川から流入した水が海水に混ざりやすく、この混合によって栄養が運搬拡散され、水産養殖に適した植物プランクトンの生成が可能となります。

簡単にいえば、浅いことで川から運ばれた水と海水の上下の混合が進むことで餌となるプランクトン生成環境が形成されたといえます。

しかし、一方で、浅いことは、周辺からの流入した汚濁物が堆積しやすく、その影響が水面近くまで及ぼしやすいことでもあります。

たとえば、日本の閉鎖海域において最も浅い部類に属するのが三重県の英虞湾ですが、ここは平均水深が10m程度しかなく、かつての美しい海が汚れ始め、それがアコヤガイの「赤変病」を出現させています。

これは、アコヤガイの貝柱が赤くなる病気です。この原因はいまだに不明ですが、現地の漁師の皆さんの証言によれば、元気な貝が弱って出てきた病気であることは間違いないそうです。

この証言の通り、Kさんと取り組んだマイクロバブルの実験において、アコヤガイを元気にし、成長させることで、この赤変病を見事に克服することができました。

しかし、この英虞湾では、その後も冷水秒対策など、色々な問題が発生していますが、これは海が浅く狭いために、汚濁問題が出やすい環境下にあることを指摘せざるをえません。

より深いのが中海、広島湾、そして東京湾などです。平均水深が15~20m前後ですが、ここでも、都市化に伴い大量の栄養が流入し、それに伴って大量の植物プランクトンが発生し、それが死後に堆積して下層に無酸素水域を形成させています。

夏場の異常高温によって、この無酸素水域が発達し、それが水質の悪化や水産養殖に打撃を与えることが珍しくなくなりました。

大船渡湾も、この広島湾とほぼ同じ平均水深を有していますが、両者の相違は、広島の方がより都市化が進んで栄養分がより大量に流入しやすいこと、そして、大船渡湾の方が横幅がせまく、そのために滞留域がなく、干満による海水交換が直接起こりやすい地形になっていることが指摘できます。

されに、40m程度の水深の海域は、陸奥湾、宇和海、北海道噴火湾、鹿児島錦江湾などがあります。これらでは、深い分だけ、プランクトンの体積にも余裕があり、その下層の無酸素・貧酸素状態の水域が上層まで影響しにくい傾向にあります。

しかし、その陸奥湾においても、昨年度は、その南半分で大変大規模な無酸素水域の形成があり、大規模な被害がホタテ漁において発生しました。この南半分の領域では、陸奥湾内において海水が停滞しやすく、また都市化による汚濁物の流入が比較的多いことが、この現象の出現に影響していたと思われます。

こうして、全体を見渡しますと、南から北へ、そして浅い海域からより深い海域へ、汚濁が進み、かつての立派な漁場が衰退の途にあることが認識されます。

また、そのことは、その海域に済む魚介類からも推察できることでもあり、これらのかつての海を取り戻し、水産養殖の改善を行うことには、全国共通の課題が存在していると考えることができます。

大船渡湾の場合、これらの問題に加えて地震と大津波の問題が加わりました。これで一挙に極度な困難のなかに陥れられたのです。

その意味で、二重三重、あるいは四重の困難を克服していかねばならない、そのために、なんとか「科学の知恵の力」で、それらの困難を突破していきたい、このような課題が直接与えられたのだと思います。

この試練、マイクロバブルにとっては、これまで経験したことがない、課題と困難の深さを有していますが、それをマイクロバブルによって改善・突破できるかどうか、そのことが今の瞬間も問われているのだと思います。

明日から9月、まもなく、その4度目の陸奥の旅の準備を始めるころで、忙しくなりそうです(つづく)。