海洋生物にとっての夏は9月、この最も水温が高くなる季節をどう乗り越えるか、これが自らの生命と生育活動に重要な影響を与えます。

岩手県水産技術センターから発表される水温データによれば、この10日間、その最高温の約22℃を維持し続けています。

異常高温だった昨年とはだいぶ違いますが、それでも、この最高温の日々をどう乗り越えるかが問題になります。

なぜなら、二枚貝など海洋生物にとっては、高温に伴って「産卵」をするか、それとも、その季節を終えた後の「身入り」に向かうか、その選択に迫られるからです。

生物にとって産卵とは、自らの子孫を残すために不可欠の非常に重要な行為です。生きていく上で、もっとも立派に成し遂げなければならないことですが、それがうまくいっていません。

それは、十分に成長しないうちに産卵と放卵してしまうからであり、これは、未熟児のままで子供を産むことと同じです。

そのため、出産する母体も危険になり、結果として生まれてくる赤ん坊も未熟児になってしまうのです。これが日本中の二枚貝で起きている現象です。

ですから、二枚貝であれば、それを十分に生育させて、それから産卵をさせることが重要であり、それを可能にすることによって、昔の二枚貝を復活させることができるのです。

海水温が18℃を境にして、2枚貝のほとんどは、産卵の準備を始めます。しっかり餌も取り込み、血液としての海水の吸収量も増やそうとします。

すなわち、盛んに食物をとり、それを生命エネルギーに変換して発育を促すのです。その過程で産卵もし、子孫を残そうとするのですが、それだけ代謝にエネルギーを使いますので、体力も消耗します。

海の状況が悪くなれば、その消耗が体力弱化に結びつき、この時点で病気も発生しやすくなります。たとえば、アコヤガイの貝柱が赤くなる病気、すなわち「赤変病」も、その一つといえます。

そして、この虚弱化が進めが進むほど、放卵をたやすくするようになり、虚弱体質の子孫が生まれてしまうのです。

こうして、この虚弱体質のサイクルが形成されている、これが日本沿岸で起きている二枚貝の負荷の現状なのです。

ですから、マイクロバブルが二枚貝に対して当面立ち向かうこととは、この虚弱体質を改善することなのです。

おそらく、この結果が出てくるのは、現在の海水温の最高状態から脱し、海の夏が過ぎて秋になったころではないかと思います。

無事、この海の夏を乗り越えて秋を迎えてほしいと思っています。また、私たちヒトにとっては「残暑」の季節になりますが、この「峠」越えていくことになります。

秋風が吹き、木の葉が色づくころには、カキたちも、この厳しい夏を生き抜き、せっせと身入りに勤しむようになることでしょう。

今日でマイクロバブル発生から39日目、今もなお、マイクロバブルは、せっせと出続けています(つづく)。

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大船渡湾に栄養を運ぶ盛川(筆者撮影、2011年9月8日)