マイクロバブル発生装置104機を用いて大船渡湾に発生し始めて、本日で、ちょうど50日目になります。その総供給量は、じつに約14000立方メートルです。

この実験は、いろいろな意味で初めてのことが多いのですが、これまで無事に稼働し続けていることを何よりも心強く思っています。

しかし、自然海域の現場のことですから、何が起こるかわかりません。それこそ、他の現場においては、想定外のことがいくつも起こり、そのために実験が中断されることが少なくありませんでした。

この原因追究をしっかり行い、それを改善していくことが、そこでの現場力を向上させることにもつながりますので、今回は、その貴重な経験を生かして対応することが重要だと思っています。

じつは、先日も、現場における調査をしている最中に、突然、マイクロバブルの発生具合がおかしくなることがありました。

今しがたまで動いていたのに、と思いながらよく調べてみると、それはホースが潮の干満の影響を受けて折れ曲がって起きたアクシデントでした。

わずかずつ、ホースの位置がずれて、しかも太陽に照らされてやわらかくなり、急に折れ曲がることが起きたようで、このようなことはなかなか事前に予測することができません。

しかし、この事故が起きた後は、そのような現象が他の場所で起こることを推測することができますし、さらに、実際に起きても、その原因探索のために右往左往することが解消できます。

人間のやることですから、必ず、思わぬアクシデントが起こることを想定して現場に臨む、対応することで、その現場力を徐々に向上させていくしかないのです。

さて、大船渡湾では、8月の中旬から現在まで、水温の最高状態が続いています。その最高温は22℃前後であり、それがしばらく維持されて、どうやら下り坂に向かう傾向が現れ始めました。

カキなど二枚貝は、この一番海水温が高くなる時期に産卵期を迎え、そして排卵を行います。二枚貝にとっては、自分の子孫を残すために、それこそ必死になって産卵し、排卵をすることが、自分の務めといえます。

しかし、この過程で、いくつかの課題を宿すことになります。

その第1は、自らも成長しなければ、立派な卵を宿すことができないことです。すくすくと成長し、立派な身体になって産卵ができるようになることが大切なのですが、これがなかなか難しく、日々悪戦苦闘しているのです。

この苦闘の結果は、いまだ十分に成長できないままで、産卵する、いわば未熟児状態で卵を宿してしまうという現象で示されています。

この未熟児産卵が、広島湾、英虞湾などいろいろな海域において観察されました。おそらく、全国的にこのような産卵状況が生まれているのだと思います。

第2は、母貝そのものが、産卵と抱卵によって身体を弱め、時として斃死してしまうことすら珍しくなくなっていることです。

これに海の水質環境がおかしくなりますと、さらに斃死現象が拡大し、取り返しのつかないことが起こっていくのです。

昨年の陸奥湾において南半分のホタテの成貝や稚貝が死んだ現象は、この問題と関係しています。

また、大船渡湾においても、わずかですが、年々、この時期に斃死する二枚貝が増えているようです。

海水温は、当然のことながら、南が高く北が低いのですが、とうとう北の陸奥湾でも、南の閉鎖海域で起きていることが始まったのかと、それを深刻に受けとめさせていただきました。

春から海水温が上昇し、その上昇とともに、自らを成長させ、その成長過程で産卵を行い、子孫を残すために排卵する、これが二枚貝の務めであり、これを立派に成し遂げさせるためには、すくすくと成長させ、少々の困難や水質悪化にも耐えうる元気な二枚貝にする必要があるのです。

この二枚貝のなかのカキを元気にする、その手伝いをマイクロバブルがせっせと行っているのです。

8月、9月の暑い時期に、マイクロバブルをひたすら供給してきました。それは、最高温時期という山場を乗り越えて、すくすくと育てるためであり、今、その水温の峠をようやく越えようとしているのです。

この峠を越えると何が起こるか、昔、「峠の群像」という大河ドラマがありましたが、峠を越えると、物事が一挙に進み始めることをモチーフにして物語が展開されていました。

この物語のように、最高水温の峠を越えると、坂道を転がるように、カキは自らの身体を養う「身入り」に向かいます。

かつて、私は、この「身入り」の様を広島湾において観察してきました。今度は、その「身入り」を大船渡湾で再観察したいと思います。

石が坂道を転がると、他の小石を動かし、土を掘り、そして誇りを巻きたてます。この様を海に例えますと、海水が上も下も混ざり合うことになり、上と下の温度が同じになっていきます。

こうなると海の環境は良くなり、夏場の危機を脱していくのです。

これから、どこまで坂道を転がるか、とても楽しみな季節を迎えることになります(つづく)。

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大船渡湾蛸の浦付近の海域(YO氏撮影)