「地元『しまね』のためにいろいろな提言までいただき、ありがとうございました。講演が終了してから何本も私のところに電話がかかってきて、大変な反響でした」

これは、夕食会の折に報告がなされた折の言葉でした。

どうやら、本日の講演は反響が少なくなかったようで一安心、そういえば、みなさん、とても熱心に聞いておられました。

おそらく、はじめて聞くことばかりの話が多かったと思われますので、一人も居眠りをなさる方はいませんでした。

それどころか、食ういるような眼で話を聞かれていたのが印象的でした。

私は、ある知人の方が、前からすぐのところに座っておられましたので、ほとんど、その方の表情を見ながら講演をさせていただきました。

このように特定の方だけを見ながら講演を行うことは珍しいことです。それから、一段高い講演舞台から降りて、会場のみなさんと同じフロアから講演を行ったことで、より聴衆のみなさんとの親近感を増しながら講演ができたこともよかったことでした。

手ごたえとおおましょうか、何かを変える契機となる「講演」というものを何度か経験したことがありますが、今回は、どうやら、それに近いものが生まれたのではないかという「直観」を得たような気がしました。

さて、その講演が終わってから、玉造温泉の旅館である「白石屋」に行きました。昔は、「白石」と呼ばれていたのが、いつのまにか「白石屋」に変わったそうです。

この温泉地の真ん中を流れる川の傍の旅館で、底からの眺めが非常によかったことはすでに書かせていただきました。

この玄関を入ると、すぐ右手に応接フロアがあり、その奥には、立派な日本庭園がありました。きれいな松があり、その下には水が流れ、池の中では鯉がゆったりと泳いでいました。

おそらく、ご当地では老舗の旅館なのでしょうか、そして建て増しのせいでしょうか、やや複雑な経路をたどりながら部屋まで案内されました。

しばらく、本日の余韻を楽しみながら、風呂に入るのを止めて、川を眺めていることにしました。この窓からの景色と水の音を楽しむためであり、そのことに「ここちよさ」を覚えたからでした。

ここには、相当前に来た記憶がありますが、そのときのことは何も覚えていません。「泊った旅館は、どこだったのであろうか?」、しばし記憶をたどっているうちに、時間は過ぎていました。

「ちょっと先に降りて、お土産ものを見たいのですが、どうでしょうか?」

こう言われ、私も同行することにしました。

その店の前に来て、すぐに「モンドセレクション最高金賞」のパネルが目にとまりました。

米子市の寿屋製菓の「白ウサギフィナンシャ」という洋菓子が、その最高金賞を受賞しているではないですか。しかも、「金賞」を2回受けた後の「最高金賞」ですから、ここには努力の跡があります。

そこで、売り子の女性と早速、このモンドセレクション論議を楽しむことにしました。こちらにも、最高金賞3連覇、その前の金賞を加えれば4連覇の村重酒造の実績がありますので、その話が弾みました。

このフィナンシェは焼き菓子の一種ですが、どちらかといえばドーナツのような味で、とても美味しく舌触りのよいお菓子でした。洋風「因幡の白ウサギ」版のお菓子といえ、形も、白ウサギを模していました。

このお土産を一通り見て、そろそろ食事の時間の頃だと思ってフロアを上がったのですが、ここで少し遅れてしまいました。

なぜなら、その食事の会場に行くまでに、たくさんの絵画と焼き物、それから掛け軸や屏風に見とれてしまったからでした。

「ここは美術館か!」

と思わせるほど、それこそ4、5mおきに、それらが配置されていて、目を奪われ、そして心を奪われました。

後で聞くところによりますと、この旅館の大女将が好きで集められたそうですが、このふんだんの美術品には吃驚させられました。

全国、それこそたくさんの旅館やホテルに泊まったことがありますが、このように美術品にあふれた旅館は初めてのことでした。

ですから、4m歩いては立ち止まり、しばし、それらを鑑賞させていただいたので時間に遅れることになってしまいました。

ついでに、食事の会場の前まで来ても、そこを通り過ぎて先の美術品まで見てしまうほどで、担当の女性に見間違いをされてしまいました。

というわけで、たっぷりと目の保養をさせていただき、食事の会場に行かせていただきました。

これは、相当の凝り性といいますか、それこそ、部屋と部屋の間に壺が飾られ、廊下やそのコーナーに絵や掛け軸があるのですから、しかも、それらが見事に収まっているですから見事というしかありません。

こんな素晴らしいところがあったのかと思うことしきりでした。

ここの大女将さんともいろいろな話をして親しくなり、記念の爪切までいただきました。

風情のある露天風呂、そして美術館のような旅館の白石屋、「しまね」に、どのようにして戦う出城である「グリーンフォート(緑の砦)」をどう築くか、その講演の余震が残ったままの一夜となりました。

また、今度訪れてみたいという気持ちを残して、この旅館を出ることができました(つづく)。

月夜-2http://www.typepad.com/site/blogs/6a0120a60ee288970b0120a665fa3a970c/post/6a0120a60ee288970b014e8c1c5418970d/edit#