「大分の土地に家をたてようか」

この提案に、家内はすぐに賛成しました。そのころから、彼女は家づくりに関心を持ち始めて、いろいろと資料を集めて検討を開始していました。

その中には、山中省吾さんらが果敢にも発行されていた「イエヒト」も含まれていて、私も、それをおもしろく読ませていただきました。

この中には、大分県の建築家が設計された家の紹介もあり、その建築思想に関心を持たせていただました。

その当時は、丁度、アメリカで大統領選挙があり、今の大統領が上り調子の時でした。

彼は、10数兆円の緊急財政出動と約400万人の雇用を生み出すという「グリーン・ニューディール」を打ち出し、全世界にアメリカの立ち直りをアピールしていました。

「そうか、これからは、グリーン・ニューディールの時代なのだ!マイクロバブルで頑張って、新築の我が家に、彼が来ていただくのはどうかな?」

こう家内にいうと、不思議な顔をして尋ねてきました。

「なぜ、アメリカの大統領なのですか?」

「大分の土地が宇佐市(USA)にあるからだよ!」

高校生の頃に、アメリカの占領軍が宇佐市に来た時に、「USA」という看板を見て、とても喜んだことを聞いていました。

「そのUSAだよ!」

「そういえば、先日のテレビで、大統領が初めて執務をしたときの家(私邸)の様子が放送されていました。

そのとき、ちらっとでしたが、大統領の机が映されていました。とっても素敵な机でしたので、そのような机を新築した家のリビングに置いたらどうですか?」

「USAに、USAの大統領を新築の家のリビングに来ていただいたときに、彼が使っている机と同じものがあるとしたら、彼もさぞかし吃驚するだろうね!」

「そうですよ、そうしましょう!」

何事においても、冗談が本気になる彼女ですから、それからすっかり新築の家の机のことで話が弾みました。

「いったい、その机はいくらしたんだろうか?」

「たしか、テレビでは200万円とかいっていました」

「200万円、それは高すぎるよ」

「大統領ですから、高いということはありませんよ。むしろ安いぐらいです」

「それも、そうだな。しかし、私にとっては手が出ないほど高い買い物だよ!」

「いえ、いえ、決して、そんなことはありませんよ!」

こんな会話を経て、いつのまにか、この大統領の机で仕事をできればいいなと思うようになっていた私でしたが、その肝心の新築の計画が頓挫してしまい、この机のこともすっかり忘れてしまっていました。

それから、もともとは、グリーン・ニューディールから端を発した話ですから、ここまで遡って考える必要がある問題です。

その大統領は、最初の勢いはどこかに行ってしまって、山ほどの困難に立ち向かっているものの苦戦を強いられています。

その意味で、グリーン・ニューディールは、これからの未来において、とても重要な課題だと思います。

そして、それが実現され始めたときに、もう一度、この机のことを思い出してみようと思います。

私には、母と一緒に買った、やや小ぶりの、よい思い出の机がありますので、それで十分だと思っています(つづく)。

Gohho いす