この数日来、締め切りの原稿がいくつかあり、それに没頭していました。人間の頭というものは不思議なもので、何を書こうかと真剣に考え続けていると、それようの頭になってしまいますね。

なんだか、日頃とは異なる頭になってしまって、それだから、円滑に筆が進むようになるのです。それを執筆の集中力が増すということでしょうか、作家のみなさんは、この精神状態がもっと優れて発達しているのでしょうね。

この場合、その状況になったかどうかは、テレビをみているとわかります。その内容が上の空になり、何をみているのかわからなくなるのです。

つまり、テレビの内容に頭が引きずられていかず、いつも己の頭の中で考えていることが優先するようになるのですからふしぎなものですね。

さて、この原稿ラッシュのあまりに、本ブログが少し滞ってしまいました。先日来の主題に戻ることにしましょう。

それは、先に示させていただいた新しいカキのことです。この新種のカキの特徴を考えてみました。

その第一は、非常にカキの色が白い、雪のような色をしていました。これはサイズに関係ありませんでした。8月初めの実験開始前のカキの色は、その産卵の影響もあり、どちらかといえば黄褐色、あるいはピンクがかった色をしていました。

その写真データがきちんとありますので、それを確認することができますが、マイクロバブルを供給し始めてから、これが徐々に変化し始めました。

とくに、9月中旬に入って水温が下がり始めた時点から、この白色化が進んだような気がしています。

水温が下がり始めますと、体力消耗が少なくなりますので、その分だけ、グリコーゲンを蓄積しやすくなるからではないかと思います。また、その白色化はグリコーゲンの増加と関係しているような気がしています。

第二の特徴は、身の膨らみが均一で大きいことです。よくカキの横断面を切って、この様子を調べることにしていますが、その中身は次のような内容です。

まず、その中央部に内臓部分があり、そこは黒い色をしています。ここの部分が多いと、その味は渋く、あるいは苦く、それを本来のカキの味だという方々もおられます。

この場合は、その周囲の肉質部分よりも内臓部分の味が優先するから、そのような味を感じてしまいます。

これに対し、内臓を囲む肉質部分が多いと、すなわち、今回のカキのようになりますと、内臓の部分よりも、周囲の肉質部分の味が優先するようになります。

ですから、この周囲の身の部分が膨らんでふっくら、あるいはプリンプリンになることは、調節カキの味とも関係しているのです。

それにしても、その先から貝柱の部分までバランスよく膨らんでいて、みごとなカキでした。地元のカキ漁師さんは、この膨らみの部分を注意深く観察して、その善し悪しを見分けるようで、私も勉強になりました。

第三は、貝柱の大きさと固さに関することです。一般に、貝柱が大きく、しかも固くてしっかりしているカキは元気で成長しているカキです。

その典型はアコヤガイであり、今頃になると、その浜揚げという貝剥きが行われ、この貝柱の部分を取って食べます。

毎年のようにK2さんから、この貝柱が送られてきますので、私は、これをよく天ぷらに揚げて食べます。また、その時の味で、貝の善し悪しも確かめることができますので、いつも、その大きさや色、そして味を確かめるのです。

アコヤガイの色といえば、赤変病といって、その貝柱が赤くなる原因不明の病気です。この病気にかかると貝柱の色が文字通り赤くなり、そして小さく、さらにやわらかくなってしまうのです。

貝柱といえば、ホタテも重要な部分です。これでも、同じことがいえ、先日も北海道から購入したというホタテを見させていただきました。

さっそく、その一つを剥いてもらい、その身をいろいろと観察させていただきました。その際、ホタテの貝柱の部分を自分の指でさわり、固さを調べましたが、それがぐにゃぐにゃで、ここに問題があるなと思いました。

また、その貝柱の部分を切っていただき食べて味を確かめましたが、それは美味しくありませんでした。

ですから、これらのことはカキも同じで、大きく、固い貝柱であることが、非常に重要な特徴になるのです。

この観点から、先日のカキを見ますと、まず貝柱の大きさが尋常ではなく、およそ2倍以上もあることに気付きました。このようなサイズの貝柱をなかなか見ることはできません。

そして固さはしっかり固く、手ごたえがありました。しかし、この固さは、単純な固さではなく、固くは弾力性がある、そのような固さであることを付記しておきます。

この弾力性に富むことが、その歯ごたえと関係しています。すなわち、弾力性のある固さであり、それを食べると意外と食べやすいのです。

これは、冷えたピザを食べるときに、それを折り曲げてパチンと折れるようなピザと、逆に群やっと曲がるピザの違いでもあります。前者だと固くてなかなか食べられませんが、後者ですとあまり気にせず、やわらかく食べることができます。

これは弾力性があるかどうかの問題であり、このカキにも、その違いがいえたのではないかと思っています。

ですから、弾力性のある固さを持ったカキ、こう言い換えた方がよいのかもしれません。

第四の特徴は、その味そのものです。これが何と言っても一番の指標になります。食べることによって、その価値が決まるのですから、ここが勝負といえます。

さて、そのプリンプリンのカキを2つに切り、その先端部分を私が、残りの貝柱がついている方をYO氏が食べました。YO氏は、日頃決して生のカキを食べないのですが、この日は違っていました。

あまりにも見事なカキですから、自分の習慣を打ち破って食べるといいだしたのでした。そして二人して、この味に驚嘆しました。

それは、なんともいえない素晴らしい味でした。

「これが、新種のカキの味か!」

私も彼も、船の上で吃驚仰天していました。まことに摩訶不思議、新しい味でした(つづく)。

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夜明け前の大船渡湾湾口、筆者撮影。