ご周知のように,大津波で破壊された多くの地域は漁業で成り立っています.それこそ,海岸線の狭い土地に,へばりつくように村や町が形成されてきました.

それは,その眼前に宝の海があり,たくさんの魚介類を水揚げすることができたからです.加えて,港の周辺には,その水産加工業や仲買が生まれてきました.

同時に,それらを相手にした商業も形成されてきました.なかには,陸の農業とも結びついて食品工業を発展させる地域も出てきました.

それから,海運の便利さを利用して,セメントや鉄の工場誘致や造船会社,冷凍会社もできるようになりました.

もともと,この地域は,夏は涼しく,冬も比較的暖かく,雪はない,極寒の季節を除けば住みやすく,安くて美味しい食べ物があるところです.

そのことは,大船渡の宿屋「光潮荘」で出される食事をいただいて,本当に実感したことでした.

この自然と食物文化の豊かな地が破壊されたのですから,これをまず取り戻すことが「復興」を成し遂げる重要な最初のステップのひとつといえます.

ところが,被災地のみなさんの現状は,いまだに容易ならざる状況が続いています.

住むところは仮設住宅,この厳しい冬の寒さに耐えて過ごさねばなりません.

漁業の作業場がなく,その土地も地震で沈んでしまいました.

カキ業者についていえば,作業の船がなく,カキも共通で養殖しているわずかなカキしかなく,その出荷の目処も立てられないなど,先は決して明るいものではありません.

そんな中で,必死で歯を食いしばって,その再建をめざしているのです.

それは,啄木の「働けど,働けど,わが暮らしは楽にならず,じっと手を見る」という実感と同じなのではないでしょうか.

この暮らしと水産業の現場に分け入り,それらを根本的に変革していくには,どうすればよいか,これが問われたのです.

しかも,すべてが破壊され,流された後の,いわばゼロ,あるいはマイナスの状態からの復興が求められたのでした.

「これをどうするか,どうブレイクスルーするか,そして何ができるか?」

こう考えているうちに,ひらめいたのです.

「ここは,マイクロバブルの出番ではないだろうか.いや,そうにちがいない.これまでの海での実績があるではないか.そう信じて声をだせ,飛べバッタ!」

心のなかから,このような声が聞こえてきたような気がしました.

「マイクロバブルという『科学の力』で何ができるのか?」

この追求の先に見えてきた当面の目標は,「養殖期間の短縮」でした.

近年,わが国の閉鎖海域は,どこでも水質汚染が進行し,それが魚場の衰退として出現しています.その結果,水産養殖の期間が年々延びていき,同時にそこで獲られる魚介類の生産量も減少するという事態に陥っています.

これに抗して,養殖期間を大幅に短縮することは,この閉鎖海域が陥っている負の衰退を跳ね返すことですから,なかなか容易なことではありません.

それをブレイクスルーするには,とびっきり「優秀」な科学技術的手法を適用するしかないのです.

かつて,「全かん水」の常務理事だったSさんが,しみじみ,私に語ってくれたことがありました.

「先生,水産業は,いつも最後なのです.近代科学技術の粋が適用されるのは,他の産業に行きわたってからで,いつも終わりの方なのです.

ところが,先生の技術は,他の産業よりも先に,しかも一番最初に適用していただけました.私にとって,こんなうれしいことはありません」

海洋温度差発電技術の上原春男先生の名著『成長の原理』において,「条件適応の原理」というものがあります.

これは,内的条件と外的条件が適応したときのみにおいて,物事が成長するという主旨のことです.

じつは,マイクロバブルの水産業への適用は,この原理に忠実に従っているのです(つづく).

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Sさんに届けていただいたサンマで料理をしていただいた光潮荘の夕食,YO氏が喜んで撮影した.