この一連の研究において、流れの可視化学会からは「流れの可視化技術賞」、可視化情報学会からは「功労賞」を受けることができました。

装置開発の苦闘

しかし、学会や研究会活動において進展はあったものの、社会的には、いわば「世間知らず」の未熟な状態のままでした。

もともと高専は、実践的な技術を教え、研究するところですから、その技術研究の成果を用いて「社会貢献」を行うことが重要なのですが、これが不十分な段階に留まっていました。

その「社会的目覚め」の契機となったのが地元企業からの技術開発委員会への参加依頼でした。ここでは、下水処理槽内のエアレーション法が問題となり、その装置を開発することになりました。

この開発が後のマイクロバブル発生装置の発明に結びついていくのですが、当時は、どうすれば水の中で極小の泡を作ることができるかを考え続け、時は夜通しの実験で朝を迎えることを繰り返した日々をありました。

こうして足かけ15年の歳月を経て、1995年に、現在のマイクロバブル発生装置を完成させることができました。

その過程は、真に偶然の連続であり、しかも小さな積み重ねによって一歩一歩の技術的な改良が進む中で、その装置の完成に近づいていきました。

当時は、化学工学の分野を中心に、何とか気泡を小さくしたいという開発への挑戦的試みが盛んに行われていたそうですが、それを実現することができなかったことを後で知りました。

私は、そんなことも知らず、ただ黙々と「マイクロバブル」を発生させることに挑戦していたのでした。

しかし、やっとの思いで装置を完成させたものの、その利用においては、足踏み状態がしばらく続きました。

それは気体の高濃度溶解がある程度可能になったものの、それが完璧な領域にまで達成してはいなかったこと、それから、肝心のマイクロバブルの発生量自体が、かなり少なかったことなどに起因していました。

つづく

水道水マイクロバブル

水道水で発生したマイクロバブル(白濁化しないことに特徴がある。筆者撮影)