マイクロバブル技術の展開

マイクロバブル技術は、上述の水産分野への適用を皮切りにして、徐々に広範囲の分野に拡大していきました。

具体的には、健康・医療、食糧・バイオ、そして環境・エネルギーという、わが国における重要な基幹分野において着実に普及し始めています。

とくに、ダム貯水池の水質浄化、植物工場、排水処理、半導体や機械部品の洗浄などにおいて優れた成果が生まれ、少なくない注目を集めるようになりました。

また、マイクロバブル技術の普及のために、2004年に、技術移転を行ったVB(ベンチャービジネス会社)である㈱ナノプラネット研究所が設立されました(後に、山口大学発ベンチャービジネス企業として認定を受けました)。

最近では、次の2つの、食品業界のおけるマイクロバブル技術の成果が注目されています。

その第1は、広島市宮島の「いわむらもみじ屋」の「もみじ饅頭」がよく売れていることです。

マイクロバブルを巧みに利用した「こだわり」の技術を確立することによって、日曜祭日には、1日1万個以上が売れるまでになりました。

先日も平日の午前中に訪れてみましたが、饅頭を買いに来るお客さんが並んでいました。マイクロバブル技術によって味を格段に洗練・向上させたことが決め手となりました(図-5)。

もみじまんじゅう

図-5 いわむらもみじ屋のもみじ饅頭


第2は、山口県岩国市の村重酒造が行った挑戦です。

ベルギー国主催の世界的に有名な「モンドセレクション」という食品コンテストがあります。

この日本酒部門で、村重酒造の「錦」という大吟醸酒が2009年から3年連続で「最高金賞」を受賞したのです。

もちろん、わが国においても「歴代1位」という表彰を受け、文字通り「世界一」、「日本一」という快挙を成し遂げたのです。

これには、日下杜氏を始めとするスタッフのみなさんの、マイクロバブル技術の適用に関する「知恵と工夫」がありました(図-6)。

もんどせれくしょん

図-6 村重酒造が受賞したモンドセレクション最高金賞のメダル

このように、マイクロバブル技術は徐々に発展していきましたが、これらのシーズが「T高専から生まれ」、そして「育った技術」であるという「社会的認知」も自然になされるようになっていきました。

つづく