東京からある企業の方が本格的な相談に来られました.久しぶりでしたので,昨夜は食事をいっしょにして団欒を楽しみました.

この方とは長い付き合いで,その都度重要な話をしてきました.

若いころは,世界のトップ企業の技術者として活躍されてきただけに,その国際的視野の広さ,技術的洞察力,さらには,未来への先見性において鋭い直観を有した方でもあります.

それゆえに,彼とは,いつも頭を抱えて,なおかつ,そこからアイデアやひらめきが生まれてくるような議論,正確には生まれてくるまで行う議論を,延々と繰り返してきました.

今回も,そうなるであろうと思っていましたが,案の定,そのルートを辿ることになりました.

その開始は朝の9時から,まずは,最近の状況を彼から教えていただき,その理解に努めました.

彼の情勢報告によって,まずは,この未来技術に関する国内技術の状況の概要を把握することができました.

その中には,本未来技術において,なぜ,技術革新(イノベーション)が起こらないのか,その根本問題の指摘もありました.

未来技術とは,文字通り近未来において花開く技術のことをいいます.この技術革新の成果が飛躍的に大きい場合には,これを「ブレイクスルー技術」ということもできます.

彼によれば,この未来技術がブレイクスルー技術へと急速に発展しないのは,そこに2つの困難があり,それをぜひとも解決する必要があり,この成就を世界中が待っているとこのことでした.

とくに,彼は,北欧にある世界でトップの企業に長年おられましたので,その当時の同僚もかなりいて,その方々との協働も可能ということで,この相談は,国内に留まらない視野を有したものでした.

この情勢報告を踏まえて,上記2つの困難のうちの1つについて,それをどう克服したらよいか,この議論に入っていきました.

この過程は,まず,いろいろな角度から議論することから始めます.当然のことながら,その議論は発散し,あちこちに広がっていきます.

その結果,さまざまなアイデアが生まれてきて,それらをまとめると,その第1案が出てきます.

それができると,次のアイデア,すなわち第2案が形成されます.こうして行ける所まで行きます.

今回は第5案まで行って止まりました.この時点では,議論の末に生まれたアイデアを粗っぽくまとめただけですので,荒削りもいいところです.

とにかく,この5つの案を文字にして,第1ステップがほぼ終了しました.すでに,時刻は昼近くになっており,その検討を中断することにしました.

「近くに,名物の『銀たち(銀色をした太刀魚のこと)』を使った『たち重』があります.これを食べにいきましょう」

こういっても,彼は,その「たち重」なるものをよく理解できていないようでした.

「『うな重』を想定してください.その鰻が太刀魚に換わったものが『たち重』です」

漁協が経営するレストランで,これを注文して説明をしているうちに,どんどん客が来て,すぐに満席になりました.

地元でも人気のレストランですから,すこし早目に到着したできたのが正解でした.

しばらく待って,その「たち重」が目の前に現れ,彼はようやく初めての「食べ物」を理解できたようでした.

さて,味はどうか?

それは,ものもいわずに,その「たち重」を食べ始めた彼の勢いでよく理解することができました.

つづく