いつのまにか,四周年記念の記事が,シャーロック・ホームズの話なってしまいましたね.

すでに予定していた内容の合間に,この探偵冒険者が割り込んできています.

最初は,この冒険物語の結末が知りたくて,次々に新しい物語を見続けていました.

しかし,最近は,これはと思うものをじっくりと,そして何度か繰り返して見るという方式に移行し始めました.

さて,その11巻に「銀星号事件」というタイトルの物語があります.

これは,「シルバー・ブレイス」という競馬馬の失踪に関する事件です.

飼い主のロス大佐は,あまり好きでなかったというホームズに,その失踪した馬を探してもらおうと依頼します.

同時に,これは,この地方警察のグレゴリー警部からの依頼でもありました.

ホームズは,この馬が失踪した現場に赴き,それまでに警部たちが探すことができなかったマッチの燃えカスとローソクを土のなかから発見します.

それを見つけたホームズに,グレゴリー警部は尋ねます.

「あれだけ,入念に探して見つからなかったものを,どうして見つけたのですか?」

「それは,私が『見当』をつけて探したからですよ」

すなわち,ホームズは,「それを探していたから見つけることができたのだ」といったのです.

暗い野山で,馬に何かをするのであれば,かならずマッチとロウソクが必要となることから,そしてそれらが警察の手によっては発見されていなかったので,「これは,かならず,あるはずだ!」と推察していたのです.

じつは,この「見当」や「推察」力が非常に大切なのです.

これを,具体的に,そして緻密(ちみつ)に推理できるかどうかが科学や技術研究においても非常に重要です.

ほとんどの場合,真実は,最初にチラッとしか顔を見せないのです.

それを補い,より確かに真実に近づいていく方法が,この「見当」や「推理」をまず働かすことなのです.

しかし,これだけでは,失踪した馬がどこにいるかを明らかにすることはできません.

それを探すためのわずかな手掛かりを見出したにすぎません.

そこで,ホームズは,その殺人現場において次の推理を行います.この時に,使用された「ことば」が,「仮説」です.

この仮説に基づいて,ホームズは,みごとな推理を働かせていきます.

ところで,作者のコナン・ドイルは,この「仮説」という言葉を,「working hypothesis」と表現しています.

直訳すれば「作業仮説」といい,その意味を調べると,「ひとつの仕事の目的に対して用いる仮説」のことをいうのだそうです.

ホームズにとっての仕事の目的は,失踪した馬を探しだし,殺人犯を明らかにすることでした.

さて,この作業仮説は,どのように組み立てられたのでしょうか?

つづく