その後、N君は、立派に卒業研究をやり遂げ、N大学に編入学し、大学院修士課程までいって大手建設会社に就職して、風の便りでは、活躍されているようです。

あの茶色の髪の毛の時、あのまま高専を退学しておれば、彼の人生はまったく違う方向に流れていったでしょう。

後で、その弟のN君も私の研究室に来て、その時の様子を聞いたことがありますが、彼を更生させるために、一家が高専の近くまで移住してきたこともあったそうで、それだけ、親御さんも真剣だったのだと思います。

私も、このN君には真剣勝負で対応し、彼の方が心をしだいに開くことになりました。若いころには、ちょっとしたことで心の迷いが生じ、それが足を踏み外すことにつながっていくことがあります。

このように、足を踏み外しそうになる学生ほど、じつは敏感であり、まずは、それを認めて、「あなたを本当に変えようとしているのですよ」という姿勢を示すことが大切だと思ってきました。

そして、それが是正されていくと、このN君のように猛烈に勉強をし始め、どんどん変わって行くのであり、そのような学生を何人も見てきました。

その成長の兆しが見えてきたときには、存分に研究に取り組めるようにしてあげることが大切であり、そのときに最高のテーマと実践の機会を与えることが教育と研究の醍醐味といえます。

しかし、今思えば、その当時は専攻科もなく、たった1年の卒業研究の取組で、これから成長し始めるぞという頃になって、いつも卒業を迎える季節になり、せっかくここまで育てたのにという淡い気持ちになったことを思い出します。

当時としては、高専における教育研究の限界があり、このまま継続して成長させたら、どんなによいかと悔しい思いを毎年のようにさせられました。

つづく