「政之助、それで、お主はいったどうするつもりかいのぉー?」

「寅次郎、わしは、そうせい公から内密に検討せよといわれて、寝ずに考えたんじゃ。その結果を、そうせい公に報告したら、なにもいわずに、ただ頷いただけじゃった!」

「『そうせい』とは、いわなんだか?」

「あぁー、だまっておられた。それでじゃのぉー、わしは、お主の幼いころのことを話し始めたんじゃ。そしたら、そうせい公の目がみるみる輝き始めてのぉー、最後には身を乗り出してこられたんじゃ」

「そうか、わしのことを覚えておられたか!」

「あたりまえじゃ、そうせい公は、お主の10歳のときのご進講のことをよく覚えておられてのぉー、えらい感心されていたぞ!」

「そうかいのぉー」

「とくに、そうせい公は、お主に質問をして、お主がみごと答えたことを、いまでも覚えておられてのぉー、あれは賢かったと誉められておられたぞ!」

その質問とは、勉強ばかりしていると実際に役立たないものまで勉強してしまうことから、そうならないために、どうしたら良いのかということであった。

これに対し、10歳の寅次郎は、「それも勉強してみないとわからないことですので、しっかり勉強してから考えさせていただきます」と、みごとに返答して、そうせい公を感心させたのであった。

「それから、ひとしきり、お主の話になってのぉー、それでわしの腹が決まったんじゃ!。そして夢のなかじゃけど、ここまで、そうせい公をお連れ申し上げたのじゃ!」

「ほぉーじゃのぉー、あれは夢じゃったのぉー」

こういいながら、寅之助と政之助は互いに笑い合った。

「それでのぉー、寅之助、どうじゃ、ペリーの船の水夫になってくれんかのぉー。いろいろ考えたが、それができるのはお主しかおらん」

「ちょっと待て、わしは国禁を犯した大罪人じゃ、そんなことできるわけがないじゃろー」

「いやっー、後はわしが何とかする、お主しかおらんのじゃ、よく考えろ!」

「政之助、大罪人のわしでもよいのか、本当に・・・・・」

「そうだ、わしらの代わりにアメリカという国のことを勉強してきてくれ、このままでは長州藩は遅かれ早かれ幕府と戦争をするようになるかもしれん。その時に備えて、勉強をしてきてくれ、わしは、お主にかけるから、頼む・・・・・」

寅次郎は、政之助の真意が心から嬉しく、涙した。

つづく

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