K1さんのメールが届いた翌日の朝に,さっそく真ダコを買いに港のセリに行くことにしました.

「ーーー よく,真ダコが水揚げされているとよいのだが・・・・」

晴れが続いていたので魚はたくさん並べられていました.しかし,肝心のタコがありません.

「ーーー 今日はだめかもしれない」

と諦めかけていたら,遅れた漁師が一箱(3匹)の真ダコを出してきました.今度は,そのタコをいつもの業者が買い取っていただけるかどうか,これが心配になってきました.

市場のルールで,私たちが直接魚を買うことはできません.業者がセリで落とした魚であれば,それを買うことができるのです.

ですから,よその業者が落とした場合には,その業者から買えない場合もあります.

「ーーー 運よく落としてくれ!」

神頼みのような心境でしたが,それが通じたのでしょうか,いつも買う業者が,そのタコを落としてくれました.

今度は,それを誰よりも早く確保する必要があります.遠慮して見ていると,他に買う方もいなかったので,「それでは私が」と出ていき,それを確保することができました.

買った真ダコは,全部で3匹,目方の総合計は,1850g,その値段は約1600円でした.そこで,比較のために,1kgあたりの単価を計算しました.

 港のセリでの単価:860円/kg  国東市安岐港

 スーパーでの販売単価:1600円/kg 国東市武蔵町

 K1さんの購入単価:2083円/kg 川崎市

かなりの違いがありますね.

「ーーー これで,K1さんに報告できる!」

頭の中は,K1さんが行った実験を再現することで一杯になっていました.

「ーーー 生きているうちに早く帰ろう!」

ところが,「里の駅で野菜を買いましょう」,「コンビニによってください」,「このコンビニでは現金引き落としができません」といわれ,次々に梯子する破目に陥りました.

心配のタコは,ビニール袋に入れたままで,結局生きていたのは1匹のみでした.それでも,K1さんと同じように塩を入れて様子を見ました.

入れた水冷たかったので,生きていた一番小さな真ダコが,見る見るうちに白くなっていきました.そして元気に動き回っていました.

ところが,元気の余りでしょうか,色が白くなってしまったと思った瞬間,墨を吐いて水が黒くなってしまいました.

その間,わずかですが,大きな真ダコの頭の部分と足の先がわずかに動いたような気がしました.しかし,それ以上の観察は墨のせいで無理でした.

それから,2~3時間後,真ダコは完全に動かなくなり死んでいました(途中の30分ぐらいまでは生きていました).

同時に購入した大型の渡りガニも,まったく同じ挙動を示していました.

その真ダコを,どきどきしながら,手で掴みました.

「おや,いつもとちがう.これはひょとして,K1さんがいっていたことか!そうかもしれない,いや,そうだ!」

真ダコを握った瞬間に,K1さんと同じことが起きたことを直感しました.

「ーーー やはり,そうだったのか!」

つづく

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月見草のつぼみ,筆者撮影