宍道湖のシジミ

 昨日、島根県宍道湖のシジミ漁師の方々10名が面会にやってきました。

 聞くところによるとシジミがいよいよ獲れなくなった、なんとか状況を打開したいとのことでした。

 とくに、この2、3年前の大降雨があってからは、まったく不漁が続いており、なんとかできないかという真剣さが伝わってきました。

 雨が降ると、陸上の栄養塩が大量に宍道湖に流入し、それが植物プランクトンの大量発生を招き、その数日後には、それらが死んでいく過程で、酸欠、無酸素水域の形成がなされます。この繰り返しで、シジミが徐々に弱り、そして育たなり、最悪の場合は8月末頃に死んでしまうこともあります。

 このパターンで宍道湖の水質は悪化を来し、その底層近くに大量の無酸素水域が形成されるようになります。

 そして、それがさらに膨らむと、宍道湖中をぐるぐると旋回するようになります。

 みなさんも、そのような現象が発生しているといわれていました。

 さて、この惨状を踏まえ、議論は、当然のことながら、いかにして、これを打開するかの問題へと移行しました。そこで私は、次のような提案を行いました。

提案

1.大規模な無酸素水域の改善問題

 中海と宍道湖は大橋川で連結されていますが、この、無酸素水域は、この2つの湖と1つの川で存在しますので、基本的には、この三者全体の改善計画を検討する必要があります。

 私が提案したのは、これを機動的に改善する「マイクロバブル船」の設置でした。

 数百機のマイクロバブル発生装置を組み込んだ大規模マイクロバブル発生装置を装備した船を、無酸素水域が極端に形成されている地域に到着させ、そこ大量のマイクロバブルを発生させて、その解消を図る方式です。

 これには、数億円の費用がかかるので、国や県が、そのマイクロバブル船を築造し、水質の

パトロールを常時行うとともに、その実現を図るシステムを確立することが重要です。

 これは、有明海においても検討された構想ではありましたが(実際には、未達成)、宍道湖、中海という貴重な汽水湖の環境改善を実現するという重要な課題に照らして考えれば、有明海にのみならず、宍道湖においても、その予算支出は決して高いものとは言えません。


2.小型装置を漁船に装備し、シジミ採取の度に、マイクロバブルを供給

 船に配備されている動力ポンプを用いて、小型のマイクロバブル発生装置を各船に設置し、シジミをとる際に、同時にマイクロバブルを発生させて「育てる行為」も行うことを考える方式です。

 これは、これまでの「獲る」一方の行為から、「育てる」という行為が新たに加わることになり、これからの漁師は、それも考える必要があるというと、みなさん、それを納得されていました。

 その一人が、現在、300名のシジミ漁師がいるので、それらが全部配備してマイクロバブルでシジミを育てることに踏み出せば、相当なことになるのではないかと質問してきましたので、「それは、その通りです。

 ぜひ、みなさんでまとまって検討してみてください」と励ましました。


3.小規模領域で、シジミを積極的にマイクロバブルで育てる

 貝の養殖に、マイクロバブル技術を用いる場合の最大の利点は、その稚貝にマイクロバブルを供給し、その体質改善と急成長を実現することにあります。

 これには大規模な装置は必要なく、限られた領域内で、マイクロバブルを大量に発生させて濃度を高め、その成長に効率よく寄与することが重要です。

 この議論では、ビニールの網に産卵後の稚貝が付着するので、それを集めて集中的にマイクロバブルを供給したらどうかというアイデアが出され、それは試してみる価値があると返事しました。

 小規模領域で、高濃度のマイクロバブルを与え、マイクロバブルの効果を実証する、これが大切なのであり、その適地があるかどうかを検討することになりました。


4.食品としてのシジミの改善

 マイクロバブルによるシジミの洗浄、におい除去、味覚改善、寿命延長など、自然食品としての問題改善を図り、高品質化を図る方式です。

 これには、水産試験場も協力していただけるとありがたい旨を述べておきました。

 この議論を経て、みなさんは、マイクロバブルと装置の見学を行い、少し勇気づけられて帰られたようでした。最後に、私も、みなさんが本気であれば、私も、宍道湖のシジミ漁の発展、環境改善のために努力をさせていただきますと述べさせていただきました。

 また、日本における代表的な汽水湖である宍道湖、この環境問題に真剣に取り

組んでおられる方はいますかと尋ねさせていただきましたが、彼らの返事は、あまりいないとのことでした。

 きっかけは、このようなことですが、無酸素水域の形成という宍道湖の「重い病気」を改善する、これはとてつもないことですが、そのような事業に取り組めることは非常に重要であり、これが発展するとよいなと思いながら、みなさんとの再会を約束しました。

 みなさんからは、20kgのシジミをお土産にいただきました。これは、とてもひとりで賞味できる量ではなく、とても吃驚しました。事務の方、アパートのみなさんなどに配って、生きのよいシジミを味わっていただくことしました。

 私も、とても格別の味で感激しましたが、これをマイクロバブル技術で、さらにおいしく価値あるものにする、それが可能となれば幸いであり、その意欲も少なからず湧いてきたように思いました(つづく)。


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