「マイクロバブルとは何か」について述べてきましたが、それらを少しおさらいして

みましょう。

その(1)では、超高速旋回式のマイクロバブル発生装置から発生したマイクロバ

ブルの大半が、その発生後に収縮して小さくなることを示しました。物理学的には、

この収縮現象が非常に重要です。

その(2)では、マイクロバブルの定義を示しました。マイクロバブルは収縮して、

「マイクロナノバブル」に変化し、それよりも小さい気泡をナノバブルと定義しまし

た。本質的に重要なことは、それらが存在するかどうかではなく、どのような作用や

機能を発揮するかどうかにあることを強調しました。

その(3)では、超高速旋回式と加圧溶解式とでは、発生したマイクロバブルの性

質が異なることに言及しました。

これらを踏まえて、より詳しい解説をおこなうために、その(3)の問題をより詳しく

検討しましょう。

「ミルクのように白い泡」、加圧溶解式で発生した気泡を、このように表現する方

が多いのですが、これには、少なくない問題が存在しています。

その第1は、「なぜ白く見える」のかという問題です。みなさんは、小さい泡がたくさ

ん発生しているから、そのように見えるのではないかと思われるかもしれません

が、はたしてそうかという問題があります。ここで、よく考えていただきたいのは、気

泡が小さくなっていくと、どのように見えるかということであり、それが、マイクロから

ナノサイズになれば、どのように目視されるのか、ここに重要なポイントがありま

す。


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これは笑い話にもならないことですが、ある講習会で、講師の

方が、加圧溶解式の「白い泡」を指さして、「これがナノバブルで

す」といったそうです。そうしたら、受講者のひとりが、さっと手を


あげて質問を次のようにしました。

「私は、ナノテクノロジーを研究している技術者ですが、ナノサイズになると固体粒

子でさえも透明になり、目に見えるものではありません。今、あなたが言われたこと

についてですが、その白いのがナノバブルというのは、本当に正しいことでしょう

か。ナノサイズの気泡であれば、透明である、これが常識であると思いますが、い

かがでしょうか」

この講師は困って何もいえなかったそうですが、これが受講者の口伝えとなり、有

名な話となりました。これには、後日談があり、次の機会においては、さすがに反省

をされたのでしょうか、白い泡の部分ではなく、透明の部分を指して、「ここにナノバ

ブルが存在しています」といわれたようですが、いずれにしても、少し赤面してしま

うような話です。

ナノサイズの固体粒子が透明である、これは、ナノサイズに留まる問題ではあり

ません。ファインセラミックスという材料があります。これは、マイクロサイズのセラ

ミックスでも、ガラスのように透明になり、それが、たとえばトンネルの赤い色の電

灯容器として利用されています。透明でなければ、灯りを通すことができないので

用をなしません。


このように、マイクロサイズの粒子でも透明に見えることがあるわけで、気泡だけ

が、「白い」ということに関しての例外であるはずがありません。

つまり、強い光を照射しないかぎり、マイクロバブルでさえも白くは見えず、通常の

室内灯の下では、ほとんど透明で何も見えない、これが観察事実です。

そうであれば、加圧溶解式によって発生する「ミルクのように見える白い泡はなに

か」ということになりますが、その結論は、「より大きな泡の集団であり、それが白く

見えているにすぎない」ということになります。

現に、私の観察によっても、この加圧溶解式で発生した「白い泡」の大きさは、そ

のサイズが数十マイクメートルよりも大きいものがほとんどであり、これが白く見る

泡の正体であることを確認しています。

私が、なぜ、この問題を詳しく述べるかといいますと、それは、みなさんにきちん

と区別して、マイクロバブルに関する正しい科学的な理解をしていただきたからで

すが、それだけではない重大な問題があるからです。

それは少なくない企業や研究者が、この区別ができないまま、技術開発や商品開

発をしようとしており、それが成功には至らないと予測しているからです。

ある企業の技術者に、「加圧溶解式の白い泡に頼ってはいけませんよ」というと、

彼は次のように返事をしてきました。

「加圧溶解式の白い泡は『癒し系』、先生のマイクロバブル(超高速旋回式)は、

『生理活性系』と呼ばせていただき、まずは癒し系から商品開発していきます」

これを聞いて、「そのような考えでは、うまくいかないだろうな」と思いましたが、案

の定、その通りになりました。この事例を含めて、加圧溶解式の泡を用いて風呂商

品を開発あるいは販売しようとしている指向がありますが、これで消費者のみなさ

んに満足していただけるかどうか、この点については大いに疑問があるといわざる

をえません。

次に、その理由については、さらに詳しく述べさせていただきます。

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