1.生い立ち

(1)マイクロバブル発生の第1ステップ

 私(マイクロバブル)は、水と空気を回転させることによって生まれます。この場

合、水は空気よりも重く、空気は水よりも軽い、という2つの流体の性質を利用しま

す。石をヒモで結び、それを空中で振り回すと、石には遠くへ飛ぼうとする力が働

(はたらき)ます。これを遠心力(えんしんりょく)といいます。

 これとは反対に、空気よりも軽いものを空中で回すとどうなるでしょうか。この場

合、空気よりも軽い気体をどのようにして作るかが問題となりますが、それはロウソ

クを燃やすことによって簡単に得られます。燃えた炎は周囲の空気よりも温かく軽く

なって上に運ばれます。

 椅子(いす)にすわって、燃えるロウソクをかかえたまま回転しますと、その炎は、

どちらに傾(かたむく)くでしょうか。実験をしてみますと、それが内側に傾くことが、

すぐにわかります。この内側に向かって炎に働く力を「向心力(こうしんりょく)」とい

います。

 それでは、水と空気を一緒に回転させたらどうなるでしょうか。そうすると、水には

遠心力が働き、空気には向心力が同時に働きます。その結果、装置内では、水は

外側に、空気は内側に集まろうとしますので、装置の中心軸上に、あたかも竜巻の

ように回転する気体の「空洞部」が形成されます。これで液体部と気体部が回転し

ながら分離されますので、これを「遠向心分離(えんこうしんぶんり)作用(さよう)」と

いいます。

 このように、外側で回転する液体と内側で回転する気体を同時に形成させるよう

にすることが、マイクロバブルを発生させるための第1ステップとなります。


(2)回転数

 次の問題は、水と空気を回転させる回転数が非常に大きいことです。その回転

は、1秒間に400~600回転もという、非常に早い回転であり、これを「超高速回転

(ちょうこうそくかいてん)」といいます。この超高速の回転数が、通常の場合と大き

く異(こと)なるのです。

 そこで、水の中で回転するもの、容器の中で液体が回転するものについて調べて

みましょう。これらには、船のプロペラやポンプなどがあり、その動力は「モーター」

と呼ばれるものです。このモータの回転数は、通常、1秒間に、せいぜい50回転て

いどですから、マイクロバブルの場合は、その約10倍も速いのです。

 ほかにも、この世の中で早く回転するものをしらべてみましたが、一番速く回転す

るものはジェット機のエンジンに使用されているターボモーターで、これは、1秒間に

1600回転も回ります。さすがに、これにはかないませんが、同じタイプのエンジン

がスペースシャトルに組み込まれました。この回転数は、1秒間に600回転で、マイ

クロバブルを発生するときの回転数とほぼ同じです。しかも、これらは、空気のなか

での回転ですから、私の知るかぎり、水の中で空気を超高速で回すことなど、だれ

も試みたことがなかったのではないかと思っています。

 もしかしたら、世界中の誰も経験したことがなかったことを実現したのかもしれま

せん。そうであれば、誰も知らない結果が出てきてもふしぎではないのです。

 マイクロバブルは、その生い立ちからして、未知の問題が伴っていたのです。

 この水と空気を超高速で回転させることを科学的に調べる学問を「超高速回転流

体力学」と呼ぶことにしていますが、これは、これから新たに作り上げる学問といえ

ます。みなさんが、大人になるころには、この新しい学問も立派に成長しているかも

しれません。そのためには、昼も夜も、気の遠くなるような「研究」という努力が必要

になります。その新しい学問が、世界に先駆けて、この日本で打ちたてられるとよ

いですね。

 マイクロバブルとしての私は、それを誇りにしたいと思っています。どうか、みなさ

ん、私のためにもがんばってくださいね。

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