(3)生物モーター
高速で回転するのは機械(きかい)や装置(そうち)だけでなく、小さな細菌(さい
きん)や細胞のなかのミトコンドリアにおいてもタンパク質が高速で回転していま
す。
たとえば、食中毒(しょくちゅうどく)の原因の一つである「サルモレラ菌(きん)」
というのがありますが、この鞭毛(べんもう)は、1秒間に約170回も回転していて
います。マイクロバブルほどではありませんが、これはかなり高速の回転数です。
また、この回転においては摩擦抵抗(まさつていこう)がほとんどなく、その回転効
率(かいてんこうりつ)が100%に近いというのですから、さらに驚(おどろ)きです。
さて、このように高速で回転することが同じだけはでなく、もっと興味深いのは、そ
の回転によって生み出される物質にも同一性があり、これが非常におもしろく注目
されています。
サルモレラ菌のような小さな微生物から、マイクロバブルの発生装置をながめる
とすると、そのサイズは巨大なものになります。それは、虫であるアリが超高層
(ちょうこうそう)のビルを見上げることと同じです。
ですから、この同一の性質を踏(ふ)まえますと、もしかして、マイクロバブル発生
装置は、「巨大な生物モーター」である可能性もあり、これを確かめることは非常に
重要なことといえます。
この研究が発展して、人工的に「生物モータ」と同じ機能(きのう)を持った機械装
置(きかいそうち)を自由に作れるようになるとよいなと思っています。
このように、水のような液体のなかでモノや空気が高速で回転することには、大
変おもしろいことが起(お)こる可能性がありますので、今後も、目がはなせない問
題といえます。
ところで、本日は、ある企業の方が来られ、新しい技術開発の相談を受けました。
じっくり話し合っているうちに、ふと、最近明らかになった結果を思い出し、それとの
関係を考えているうちに、一つのアイデアが浮かんできて、「これはどうですか?」
というと、目の前の、その方が、何もいえなくなっていました。絶句(ぜっく)、つまり
おどろいて何もいえなくなるのは、このことかと思いましたが、ほんとうに、しどろも
どろになっていました。
エネルギー資源が高騰する世の中で、これを改善する相談でしたので、その改善
は非常に重要なことです。
別れるときに、かれは、「2008年8月1日は、記念すべき日になるかもしれません
ね」とおっしゃられていましたので、「そうなるとよいですね」と返事をさせていただき
ました。
このように、本日は、この方と「夢とロマン」を分かち合う話ができ、通常では、な
かなか経験できない、とてもよい一日となりました。知恵(ちえ)と工夫(くふう)で、
問題(もんだい)を根本的(こんぽんてき)に変える、つまり、「ブレイクスルー」が、
とても大切であると思いました。
コメント
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それと、ナノプラネット研究所に募集要項はありませんが、そこで働くにはどうしたらいいのですか?
コメントありがとうございます。来年の卒業研究を何をするかを決めねばならない時期を迎えられているようで、とても大切な時期ですね。お尋ねの、マイクロバブルに関する研究の動機についてですが、それは、山口県にある小さな企業からの依頼を受け、下水処理装置の開発を行う委員会に参加したことにありました。この経緯については、拙著『マイクロバブルのすべて』に詳しく書かれていますので、良かったら御一読ください。
ここで検討されていた最新のエアレーション装置がよくないことに気づき、そこから、新しい装置を開発しようと思いました。このときは今のマイクロバブル発生装置は、その基本概念もできあがっておらず、それから10年を経て、1995年に今の装置が完成しました。大学ではまったく違うことを研究し、その後高専でも「川の乱流」のことを研究していました。マイクロバブルの研究は、当然のことながら、自分で開発した装置を用いてしかできませんので、それから、マイクロバブルの「優れた特性」を解明していくことになりました。ですから、自分で見出した研究テーマということになります。マイクロバブルの科学技術に関する理論構築は、まだ、生成期にあり、しかも、幅広い分野に及んでいますので、それを行うには、10年、20年の歳月が必要と思われます。また、「精神論が先行している」というご意見をお持ちのようですが、それは、それでとても大切なことと思っています。つまり、それは、マイクロバブルの刺激がヒトを含む動物の精神的作用にも及ぼしている可能性がありますので、その精神論を科学的に解明することも重要な課題といえます。これは、マイクロバブル社会学、マイクロバブル未来学における一つの重要な柱になる部分となるような気がします。また、本ブログが科学的根拠や実証を抜きにして述べられるようになれば、巷にある「ただ売りたいだけで、できないことまでできると偽る」、「核心の最も大切なことを隠して、何でもできると幻想をふりまく」などの見解と同じになってしまいますので、それらとは同じにならないように必要な注意を払って記事を書いていますので、今後もその姿勢を可能なかぎり継続させていただきたいと思っています。
㈱ナノプラネット研究所は大学院生が社長で彼を含めて数名のスタッフで経営を行っている会社です。今年は、大学工学部の学生が一人入社し、同時に徳山高専の私の研究室に研究生として派遣されています。かれは私と一緒にマイクロバブルの研究を行っていますが、大変鍛えられています。まだまだ小さなVB会社ですので、新卒を採用するまでの余裕はないと思いますが、ご希望であれば、会社の方に直接尋ねられてください。
近い将来においては、ぜひとも、マイクロバブル研究の核形成ができる研究所へと発展させていきたいと思っていますが、今はその準備段階にあるといえます。
ブログを読んでの疑問ですが、先生は乱流を研究しているにもかかわらず、なぜマイクロバブルの現象を数値解析で解明しようとしないのですか?浄化作用は生物化学の知識が必要だから無理ですが、流れの現象自体はナビアストークスの方程式に境界条件(境界条件は決めうちですが・・)さえ決めれば、FEMである程度解けると思うのですが・・・。数学的・物理的にできないのであれば、難しい用語を使用されても構いませんので、ブログでいいので詳しく教えてください。本や論文を読んでもその部分の記載がなく、さっぱり分かりませんでした。
コメントありがとうございます。それから、拙著の『マイクロバブルのすべて』も読まれたようで、重ねて感謝申しげます。マイクロバブルについて関心を持っていただける方が増えることについて大変うれしく思います。
さて、お尋ねの件は、数値解析のことですが、そのようなアプローチは、第3回マイクロ・ナノバブル技術シンポジムでも披露されておりました。これから、発展する分野だと思います。
ここでの発表の重要な結論のひとつが、マイクロバブルは、その作り方によって、その性質が異なるというものでしたが、その結論は納得のいくものでした。なかには、装置が違おうとマイクロバブルであればみな同じという見解に固執される方もいますので、少し進歩しはじめたということでしょうか。しかし、この時にも感じたことですが、マイクロバブルの解析は、単にひとつの物理系に留まらない問題があり、そこが数値解析的アプローチの難しいところです。つまり、マイクロバブルの発生やその後の特性において化学的に重要な変化を起こしますので、それらを取り込んだモデルが必要ではないかと思っています。これを踏まえますと、有効な数値解析的手法を採用する、このような段階に到達することができないままにいる、これが正直なところです。
また、マイクロバブルは実用的な側面でも非常に重要な問題を持っていますので、そちらに引っ張られていくことが常にあります。
今の生成期においては、それも非常に重要です。なぜなら、その結果が、科学的な研究の分野に直接問題提起を行うということがいくつもあるからです。もしかして、その様は「漂流」のように映るのかもしれませんが、それも生成期における必然的な出来事のような気がしています。
とはいっても、若い研究者の方々が、どんどんアプローチをしていただくことには何の問題もありませんので、ぜひとも、その研究成果をシンポジウムなどで発表していただけたらどんなによいかと思っています。ご活躍を願っています。