京都から東京へ向かう新幹線のなかです。昨日は、とてもう

れしいことがありました。今年2月以来取り組んできた「京都

プロジェクト」における美容師さんの問題において、明るい兆

しが見えてきたからです。なによりも、実験を行ってきた、ご本

人のみなさんがとても喜ばれていたことが、その証です。これ

で10月20日のシンポジウムにも弾みがついたようです。

 さて、8月末の旅を先に示した4つの問題について少し詳しく

振り返ってみましょう。

 その第1は、「昼神温泉学」の確立の問題です。もともと、昼

神温泉水はアルカリ単純温泉ですので、その泉質が、玉川温

泉(秋田県)、蔵王温泉(山形県)のような特殊なものではあり

ません。日本各地に、このアルカリ単純温泉はいくつも存在し

ます。

 それでも、昼神温泉水の特徴は何かといえば、そのアルカリ

度が高く、水素イオン濃度では9.7もあり、これはこれで、同

じアルカリ単純温泉のなかでも比較的高いことが、温泉質の

高いことを意味しています。

 しかし、ここで重要なことは、この温泉質がマイクロバブル技

術によって大幅に向上可能であることにあります。つまり、昼

神温泉水がマイクロバブルとの相性において抜群の効果を

持っていることが判明してきたのです。

 最初は、入浴体験において明確な差が生まれました。その

ことは「ここちよさ」の違いとして表現されました。マイクロバブ

ルのない昼神温泉水においては、およそ4、5分入浴で浴槽

から出たくなりますし、実際に出てしまいます。

 ところが、マイクロバブル風呂では、「ここちよさ」を持続的に

生みだしますので、そこから「出たくない」、「もっと入っていた

い」という気持ちが湧いてきて、実際には、30分、1時間と長く

入ることになります。私も、それから私の友人たちも、この2つ

の体験を何度も繰り返して比較をしましたが、いつも、その違

いは明白でした。

 このマイクロバブルとの好相性には、きっとなにか根拠があ

るはずだ、これを解明する必要がある、これが、昼神温泉学

の確立をめざす動機となりました。

 そこで昨年、昼神温泉水を研究室まで送っていただき、その

実験を開始しました。それを担当したのがYでした。かれは、他

の研究室から派遣されてきた卒業研究生でしたが、そのせい

か、当初は、なかなか腰を据えて研究をすることができない学

生でした。そこで、ふらり、ふらりを止めて、しっかり腰を据える

か、そうでないかを明確にして、そのどちかにしなさいという

と、それでふっきれたのでしょうか、俄然、がんばり始めまし

た。

 すでに、「時遅し」でしたが、それからは、みごとに変身してい

きました。そのかれが、論文の締切前に、困った顔をして、「先

生実験をやり直します」といってきました。実験をやり直せば、

締め切りに間に合わないのは目に見えていました。なぜかと

その理由を尋ねました。

 「実験を間違えていました。水温33度の実験を行うところを

23度でやっていました。10℃も違うのでやり直します」

 実際、ぬるま湯と水の違いであり、それでは、実験結果もさ

ぞかし異なるであろうと推測しました。とにかく、「そのデータを

見せなさい」といって見てみると、今度は私が腰を抜かすほど

に驚きました。

 通常の水道水の実験では、23度という、いわば冷水におい

ては血管が収縮して、マイクロバブルを与えても血流促進は

起こりません。実際の計測においても、そうでした。

 ところが、昼神温泉水の23℃マイクロバブル実験において

は、マイクロバブル供給前と比較して数倍の血流促進を示す

という、通常では考えられない結果を示していたのです。

 「これは、大変な結果です。この実験結果が本当であれ

ば、これは今後に大変すばらしい結果を与える可能性がある

ので、これはこれで、そのままを論文に載せたらどうでしょう

か。実験をやり直し必要はないと思います」

 かれが喜んだことはもちろんのことでした。いつも要領が悪

く、やり直しの実験が多かったのですが、このときばかりは、こ

の「間違い」に感謝しました。

 「これが、本当であれば、すごいことになる。これをきちんと

調べる必要がある」

 こう思い続けてきました。そして、その結果が間違いないこと

を今回の実験において再確認することができたのです。これ

は、マイクロバブル温泉水に大きな可能性があることを示唆

するものであり、普通の温泉水が「超一級」の温泉水になり得

る可能性があることを意味していますので、全国のアルカリ単

純温泉のほとんどの方々にとっては朗報になる可能性があり

ます。

 そして次の課題は、これが「なぜ起こるのか」を解明すること

であり、そのために、マイクロバブルとの「抜群の相性」の原因

解明も必要になります。さらには、この相性が、その現実にお

い何をもたらすかについても、より深い解明が重要になりま

す。

 これについては、すでに入浴をされている方々において、大

変素晴らしい変化が起きていますので、その調査を克明に行

いながら、その関係者への啓蒙を行う必要があると思ってい

ます。

 学問は、その価値を有するものを源泉として、根拠として成

り立つものですが、この「昼神温泉学」は、その指標において

十分成立しうるものと思っています。結果として、この阿智村

の高齢者がみな元気になり、活躍をする、そのような村が出

現する、さらには、このマイクロバブル温泉による健康回復を

希望されて全国から多くの方々が湯治にくる、このような現象

が徐々に実現されるのではないかと、その近未来を予想して

います。

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