マイクロバブルの溶解効率が、ある程度向上したものの、そ
れが十分に実用化できるまでには至らなかったことについて
述べてきましたが、それに転機が訪れたのが1999年でした。
これは、その前年に江田島湾と広島湾の一部におけるカキ
養殖でほぼ全滅に近い被害が出たことを背景としてしていま
した。その原因は、南方から運ばれた「ヘテロカプサ・サーキュ
ラリスカーマ」と呼ばれる新種のプランクトンの異常発生と、そ
れに伴う無酸素水域の発生でした。
これに取り組むようになった動機は、大学の友人が電話を
かけて「何とかしてくれ」と頼まれたこと、また、その後に二人
のカキ漁師が尋ねてきて、困難な状況を打開したいと告げら
れたことにありました。
無鉄砲にも、カキのことは何も知らないまま、その友人とカキ
漁師の依頼を受け、それから、カキとの付き合いと勉強が始
まりました。素人研究者ですから、カキのことを何回も聞きな
おし、それにマイクロバブルをどのように適用するか、それを
懸命に考え続けました。
現場で生きた勉強を行い、マイクロバブルという技術を、そ
れに創造的に適用する、そして新たな融合技術をつくる、今風
にいえば、カキ養殖におけるブレイクスルー技術を創造したこ
とでした。
しかし、そのときは、カキを赤潮プランクトンからどう防御する
か、そのことで頭がいっぱいで、毎夜毎夜、その対策について
考え続けました。
そして、広島カキ筏用のマイクロバブル発生装置を開発し、
筏の下で試運転しました。
「泡が上にあがってこん、ミルクのように白い泡だ!」
このように現地の漁師が叫んだことを思い出します。マイク
ロバブルは1m上昇するのに約5時間かかりますので、上まで
上がるのに長い時間を要します。また、「ミルクのように白い
泡」という表現はどこかで聞いたと思われますが、海水の場合
は超高速旋回式でも、そのように白く見え、しかも発生量も約
5倍増加しますので、そのような表現が当てはまります(先の
加圧溶解式の「白い泡」は淡水における話です。念のため)。
カキ筏の上でおっかな吃驚の姿勢で、その壮観なマイクロ
バブルの光景を私も楽しみました。
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