広島カキ養殖改善において、最初のブレイクスルーが起こったのは、1999年

7月のことでした。それは、マイクロバブルを供給した筏とそうでない筏でカキ

の生き死にが明確に区別される事例が観察されたことでした。このときのカキ

斃死の原因は、特殊な植物プランクトンの異常発生であったことを後で聞きま

したが、そのときは、それが不明のままでした。

 この場合、カキがほとんど生きていたのは、20日間に一度だけ、4時間ほど

マイクロバブルを供給したのみであり、その周辺の筏においては、カキが6割、

7割と死んでいたこと、しかも、強いといわれている若いカキが死に、斃死直後

でまだ身が残っているのもありました。

 現地の筏の上で、これらの「違い」を自分の目で確かめました。

 「なぜ、このような『違い』が出るのであろうか。20日間で、わずか1回しか供

給していないのに、なぜ、周りのカキのように死に至らないのか。いったい何

が起きているのか?」

 この現実を前にして、マイクロバブルの機能性に関する新たな問題が次々に

膨らんできました。

 そこで、例のM(マイクロバブル博士)K(自称『ワトソン』のKさん)コンビに登

場してしていただきましょう。

 M:マイクロバブルの寿命は短いはずなのに、なぜ、20日で1回、しかも4時

間の供給で、このような「生き死に」に差が出ること、それ自体をどのように考

えればよいのかが、まず、皆目わかりませんでした。

 K:いきなり、そういわれても困るのですが、まずはマイクロバブルの寿命の

ことについて説明してください。

 M:海水では、気泡の寿命が延びることが知られています。有名な東尋坊の

泡は、打ち寄せられる波が岩にぶっつかってできますが、それが長い時間に

わたって存在することで、あのような景色を形成しています。この泡の寿命は、

海水に含まれる有機物の量が多いほど長くなります。つまり、有機物が多く含

まれた汚れた海水ほど泡ができやすく、その寿命が長いという特徴を有してい

ます。この特徴はマイクロバブルについても同じで、汚れた海水ほどマイクロ

バブルが発生しやすく、その寿命も長くなります。

 K:ちょっと待ってください。汚れた海水ほどマイクロバブルが出やすい。それ

はどうしてなのですか。

 M:液体中に有機物を含み、いわゆる「汚れた」状態になると、見掛け上の

粘性がやや増し、一方で表面張力がやや低下しますので、それがマイクロバ

ブルの発生機構を変化させることでマイクロバブルの発生量が変化します。た

とえば、冷たい水とお湯では、冷たい水の方でマイクロバブルが多く発生まし

す。また、アルコール水の方でマイクロバブルがより多く発生しますので、それ

らを考慮すると少しわかりやすいかもしれませんね。

 K:寿命の方は、どのように考えればよいのでしょうか。

 M:この場合のマイクロバブルの寿命とは、それが発生してから消滅するま

での期間をいいます。これを正確に調べることはなかなか容易ではなく、ひと

つひとつのマイクロバブルが時間的に変化し、それが消滅するまでを特殊な

装置で可視化しながら消滅するまでを丹念に追跡していく必要があります。

 K:水槽の中でマイクロバブルは動いていますよね。どうやって、それを正確

に捉えるのですか? むつかしそうですね。

 M:K君、それがあなたにもわかりますか?簡単ではありません。マイクロサ

イズの気泡を見るには、顕微鏡のような覗く装置が必要になります。しかも、

それが3次元的挙動を遂げながら上昇するのですから、それに焦点を絞り続け

て撮影を行う技術が難しいのです。いわば、自動追尾式のオートフォーカス顕

微鏡でないと、その撮影は難しいのですが、もちろん、そのような装置を作るこ

とはできませんので、それを人力のテクニックで補完する撮影を行っています。

 K:ますます、理解できない方向に話が進んでいますね。結論から先にいって

いただきましょう。海水マイクロバブルの寿命はどの程度のものなのでしょう

か。

 M:淡水のマイクロバブルでは短いもので数秒から数十秒ですが、これは比

較的大きなサイズから急激に収縮していく場合です。これとは別に、1時間経

過しても、その存在が確認される比較的小さなマイクロバブルもあるようです

ので、単純な問題ではないように思っています。おそらく、海水の場合は、その

数倍の寿命を有すると思われます。

 K:それでも、20日には及びませんね。

 M:その通りです。その長期の問題を考える際には、マイクロバブルという気

体の寿命の問題以外に、マイクロバブル水としての液体の問題、マイクロバブ

ルの生物活性問題という2つの視点からのアプローチが必要になります。

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