K:その問題の赤潮は発生したのですか? 夢で消えても,実際に発生すれ
ば問題解決にはなりませんよね。
M:さすが,現実主義のK君ですね。前年における赤潮プランクトンの発生
は,9月から始まりました。その日に向かって溶存酸素濃度がどんどん低下し
ていきました。その年も,これと同じ低下傾向を示していましたので,赤潮プラ
ンクトンの大量発生は必至と考えられていました。
K:X day に向けて,その日が一刻一刻近づいていったのですね。考えるだ
けでも大変ですよね。実際には,どうなったのですか?
M:問題のプランクトンの数が,しだいに増えていきました。1ccに1000個ま
で増えるとカキが死に始めますので,それが目安となっていました。また,この
数は降雨と関係を有していました。雨が降ると,水温が下がり,結果的にプラ
ンクトンが減少しました。
K:つまり,「雨頼み」だったということですね。
M:プランクトンの数が増えると,「雨よ,振ってくれ」と思い,願いました。ふ
しぎなことに,プランクトンの数が増えるたびに,雨がよく振りました。それで
も,最後には,1ccに1000個まで増加し,もうだめかと思っていたら,地元カキ
業者から電話があり,安全なところにカキ筏を移動しているという知らせがあり
ました。カキが死ぬ前に,移動をすることで,その死を防ぐことができたので
す。それが,どうしようもなく,死を受け入れるしかなかった前年とは違うことで
した。
K:それは,なぜ,機動的に移動できたのですか。
M:毎日,プランクトンの発生量が計測され,報告されていたので,カキ漁師
も,その判断を下すことができました。それにしても,まことに際どい状況でし
たが,雨が降るたびに,神様に感謝しました。「天が救ってくれた」と思いまし
た。雨がうれしかったですね。
K:よかったですね。天が助けてくれたのですね。
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