K:溶存酸素濃度の向上による酸素呼吸の改善、餌の植物プランクトンの摂

取量の増大、最後は血液循環の問題ですね。

 M:そうです。呼吸、食物摂取、血液循環、いずれもカキの生理活性と生育

に非常に重要な因子といえます。最後の血液循環の問題については、いろい

ろな意見がありました。まず、そのような実験は不可能だ、止めたほうがよい

というのが大半でした。

 K:それは、おかしな意見ですね。なぜ、そのような意見が出てきたのです

か。


 M:素人意見であること、何もしないで批判だけする人、これらは、問題外の

話ですが、いまだに、そのようなことをいわれる方もいます。やはり、初めての

ことをすることに対して理解が及ばなかったことが一番大きな理由だと思いま

す。

 
K:その初めてのことをやろうとした原因の方が興味がありますが、それはど

のようにして思い立ったのですか。


 M:よいところに気がtきましたね。じつは、その前にヒトにおいてマイクロバ

ブルで血流促進が起こることを見出していましたので、ヒトで起こることはカキ

でも起こるはずだと単純に考えていました。問題は、それをやるかどうかなの

ですが、その「やるかどうか」の「実行力」が問われていたのだと思います。あ

れこれいうまえに、すぐにやってみればよくわかるのですが、やらずして、あれ

これいう方のほうが世の中には多いようですね。

 
K:そういわれると頭が痛いですね。正直いいますと、私も、その世の中で多

いタイプといえますね。

 

M:実際にやってみると、カキの血流がみごとに計測されました。このとき、

一番難しかったのは、それを計測する光りセンサーをカキの心臓に取り付ける

ことでした。あまり圧迫し過ぎると、心臓をつぶしてしまいますし、わずかに付

着するだけだと、その心拍波形をえることができませんでした。あれこれ、失

敗を繰り返しましたが、結局、洗濯バサミが一番良いことがわかりました。これ

を少し細工して、安定した波形が得られるようになりました。

 
K:ほう! 洗濯バサミですか。意外なものが役立つのですね。

 
M:よくいうではないですか。「なんとかとハサミは使い用」と。

 
K:それって、私のことですか?

 
M:あまり深くは詮索しない方がよいと思いますよ。肝心のマイクロバブル実

験の結果ですが、マイクロバブルで通常の2~3倍の血流促進が起きることが

判明しました。これで、開口、溶存酸素濃度の向上、成長促進、血流促進とい

うキーワードの関連性が浮き彫りになってきました。そして、これらの結果とし

てカキの体内に何かの重要な物質が生まれているのではないかという仮説を

得るに至りました。

 
K:そうですか、とうとうそこまで行ったのですか。その到達点は学問的にも

非常に重要な意味を持っていますね。すばらしいですね。

 
M:さすがですね。そのように理解してくださるとありがたく思います。しか

し、一部には、マスコミには通用しても、学問としては成り立たない盛んに批判

する方もおられました。いつもそうですが、大切なものが確立してくるときに、

それと反対の動きが生まれてきますが、周りの方々は、あれこれといいたいの

ですね。こちらは、それに「慣れっこ」になっていきましたので、なんともないの

ですが、それも世の必然ということでしょうか。

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