アメリカ発世界金融危機が進行し、さまざまな問題が浮き彫りになってきてい

ます。先日は。アメリカものづくりのシンボル的存在で、発明王エジソンが友人

らと創った会社であるGMの株価が3ドルを切ったと報道されていました。これ

に象徴されるように、アメリカの製造業は、そのGDP比で11%、逆に金融業

は21%という数字に現われているように、アメリカという国は金融立国になっ

てしまったといわれています。日本も、これをモデルにして、さまざまな動きが

進行しており、それにも危うさを感じています。

この20年で、日本における理工系志願者が23万人から13万人に激減し、

先日の日経ビジネス誌では「さらば工学部」という特集記事が組まれるように

なるほどになりました。ここでは、東大の理系を志望した学生が経済学部へか

なりの数で進級するようになり、工学部の教員が頭を抱えているという記事が

ありました。また、私立大学では、工学部の廃部を検討しているところもあると

書かれていました。

若者が製造業の人的基盤形成を行う理工系学部に志願しないようになって

いる、これはとても心配な危機的兆候といえるのではないでしょうか。

このことを、ある学会の教育関係の委員会で発言し、「大学の先生方は、

いったいどのように考えられていますか」と尋ねたことがありますが、残念なが

ら、だれからも、それに対する返答はありませんでした。

少し、遡りますが、安部内閣の時に、政府の「科学技術会議」に参加されて

いた委員の方から重要な話を聞いたことがあります。その基本的スタンスは、

技術創造立国路線をいかに進展させるかというものですしたが、その背景に

は次のような危機感が存在していました。

「このままいけば、日本は10年で衰退する。その危機感を誰も抱いていない

ことがさらに重大な問題である。それに対応した人材育成システムを確立する

必要がある」

これを聞いた時には、その問題の10年のうち、3年ぐらいが過ぎていました

ので、それから2年ですから、その10年の半分以上は過ぎてしまったことにな

ります。同時に、その危機意識の検証を行うにも十分な半分を過ぎたのです

が、事態は、この危機意識の通りに進行しています。ある意味では、それ以上

の様相を呈しているともいえます。

この会議では、この危機意識を背景にして、それを救う人材育成システム、

つまり、技術者づくりをどうすればよいかも検討されました。そのなかで、従来

の技術者養成システムが通用しなくなった、そこには重大な構造的問題があ

るとの分析がなされていました。

J0395016