先の安倍内閣における科学技術会議において、「技術者づくり」、その人材

育成システムについて注目される議論がなされました。

 前回示したように、科学技術を振興させ、技術創造立国をつくるには、単に

技術イノベーションを実現するだけでなく、その人材育成においても、それを可

能とする新たなシステムを考える必要があると、従来よりもさらに踏み込んだ

検討がなされました。

 すなわち、人材育成、人づくりを含めて、この10年で抜本的な改革を行わな

い限り、わが国は衰退の一途を歩むと認識し、その人材育成の在り方を検討

しようとしたのです。

 それでは、我が国の人材育成システムはどのようになっているのでしょう

か。これに関連して、大手T電気メーカーの幹部から、次のような話を聞いたこ

とがあります。

 「あるとき、日本を代表する大学の先生から、この学生は、大学始まって以来

の学生ですから、きっとあなたの会社に役立つと思いますよ。ぜひ採用してく

ださいといわれ、いわれるがままに採用してみたら、普通の社員と少しも変わ

らなかった」

 これについては、私も思い当たることがあります。この数年、私の研究室を訪

ねて来られる方が後を絶ちません。少し前は、ほとんど毎日、一日3件も面会

があることも珍しくありませんでした。この中には、大手企業の方もたくさんお

られました。この方々と話をしていると、徐々に、そこに共通する姿が明らかに

なってきました。それは、自らに「ゆるぎない信条」を有している方が非常に

少なかったことでした。ですから、他力依存のタイプが多く、なにか、マイクロ

バブル技術を少し利用すると、自分の抱えている問題がすぐにでも解決する

とでも思っている方が少なくありませんでした。

 ですから、こちらの方も、決まって次のようにいうようになりました。

 「マイクロバブル技術を理解することは、簡単なようで、そうではありません。

どうか、まずは、マイクロバブルのことをよく勉強されてください」

 なかには、次のようにいわれる方もいました。

 「マイクロバブル技術で儲けられる方法を教えてください」

 このような方には、次のように反論しました。

 「あなたの会社の年間売上はいくらですか。それを倍にする、あるいは10倍

にすることを考えたことがありますか」

 こう質問すると、ほとんどが、そのようなことはありません。せいぜい1割とか

2割程度のことですと答えたかたがほとんどでした。

 「あなたの都合ではなく、マイクロバブルの特性を生かすことで技術開発が

可能になります。その時は、1割、2割の次元では修まりませんよ。そのような

次元の開発をなさろうとするのであれば、マイクロバブルのことをよく勉強され

てください」

 こういって文献や資料を渡すと、喜んで帰られましたが、ここにも今の我が国

の技術開発に関する現状の問題が垣間見えてきます。

 さて、先の科学技術会議の議論では、技術者の現状について、次のように

分析がなされています。

 D型技術者:少数であるが、このタイプの技術者がいれば会社は絶対に勝ち

抜いていける。ですから、企業側は、このタイプの社員を手放せないし、必死

で育てようとします。

 E型技術者:勝ちはしないが、絶対に負けないタイプの技術者。つまり、他に

打ち勝つような創造性の発揮は難しいが、状況対応してなんとか維持できるこ

とが得意であるタイプが相当します。この数は、E型と比較して、かなり多数い

るといわれています。

 B型技術者:科学技術の基礎を理解している技術者のことで、このタイプの

数が一番多いとされています。

 従来は、この人材構造でやってこれたが、それが難しくなってきたというので

す。このD型が輩出しなくなったという話は、上述したT社幹部の話と符合しま

す。私との面談者には、上記E型が多かったのかもしれません。

 それでは、どうすればよいのか。従来型が通用しなくなってきたのですから、

これはかなり深刻な問題といわざるをえません。

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