私には、とても印象深い映画「キューリー夫人」の思い出があります。この映

画の監督は、マーヴィン・ルロイという方で、その主演はクリア・ガースンでし

た。この映画の製作は1943年で、第2次大戦後に、最初に日本に伝えられた

ようです。

 あるとき、この映画の放映がNHK教育テレビでなされており、その内容に感

動し、運良く録画もできました。以後、何度も繰り返し見て、すっかり「あらすじ」

を覚えてしまいました。

 そこで、これからも、この映画の記憶に沿って書き進めたいと思います。

 マリーは、無事卒業論文を書き終え、故郷のポーランドに帰って高校の先生

をすることになっていました。マリーの両親も、それを大変喜んでいました。

 ところが、ピエールは彼女がいなくなることに落胆していました。そこで、彼女

が帰国する前に、自分の家での食事に招待しました。これを受け入れたマリー

の素晴らしさをピエールの両親はすぐに見抜きますが、肝心のピエールがな

かなか決断できません。マリーの方は帰国するために、荷物も整理済みでし

た。

 ここで両親の支援もあり、ピエールは最後に決断して彼女に結婚のプロポー

ズをし、彼女も、それを受け入れます。

 この決心と受諾が、セレンディピティを高めることになりました。新婚旅行は、

自転車で出発し、その船の上で、互いの仕事(研究)について心から話し合い

ます。ここで、マリーは、ベクレル教授が示してくれた写真の乾板の感光の原

因解明をしたいと素直に述べます。この研究テーマを選んだ彼女の感性は、

じつにすばらしいといえます。

 新婚旅行から帰った彼女は、その感光を可能とさせた鉱石のなかに含まれ

ている物質の分析を行いますが、これがうまくいきません。

 その鉱石を砕いて細かく成分分析を行っていくのですが、既知のものを取り

除いた物質を光度計で計ると、そこには光るものがないという計測結果になる

のでした。これが何度やっても同じ結果となったので、悩んでピエールに相談

しました。

 このとき、ピエールは、さすがに冷静に対応し、その原因解明のための議論

をリードしていきました。

 「最後に残ったものには光る物質存在していなかった。となると、後は何もな

い」

 こういいながら、マリーは「はっ」と気づきます。

 「もしや、ゴミ箱に入れた紙があった」

 「それを計ってみよう」

 光度計で、その紙の上にかすかに付着していた成分を計測してみました。

 「ここに針が来れば、そこに問題の物質が付着していたことになる」

 その針はぴたりと、その位置に止まりました。

 こうして、二人は、鉱石中に含まれていた「光る物質」の存在を確かめたので

す。この発見は、さらに「セレンディピティ」を高めることになりました。

 しかし、これは、研究の到達点ではなく、最初の「入り口」だったのです。この

研究を完成させるには、その光る物質を定量的に取り出すことが必要でした。

ここから、途方もない試練が始まることになりました。

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