しばらく中断していましたが、連載を再開します。鉱石のなかに光る物質があるこ

とを見出したマリーとピエールは、それを証明するために、ラジウムを析出させる必

要がありました。これは、壮絶な実験であり、大変な力作業を伴うものでした。その

鉱石を大量に集め、それら砕いて熱し、他の含まれている成分を除去しながら最後

にラジウムを析出させて取り出すところまで延々と実験を繰り返す必要がありまし

た。

 何事においても、そうで、偶然に、すばらしい発見を得ることがあるのですが、そ

の発見の事実を誰の目にも明らかになるようにするには、その発見の努力の数十

倍、あるいは数百倍の努力が必要になります。

 つまり、本当の「セレンディピティ」を得るには、そのすさまじい努力とそれに立ち

向かう勇気が必要になります。

 この実験の過程で、マリーは、医者から実験を止めるようにいわれます。なぜな

ら、彼女の手が癌に侵されている可能性があると指摘されたからです。しかし、彼

女は、「ここまで来たのだから、それを止めるわけにはいかない」と、少しも動じませ

んでした。ここには、揺るがない「信条」があり、それを「天職の義」だと考える立派

な使命(ミッション)を持つ姿がありました。

 こうして延々と実験は続き、5年半の歳月が流れていきました。なんと、実験を繰り

返した回数は数千回にも及びました。映画の中では、その実験回数が黒板に書か

れていて、その実験のものすごさを、さりげなく知らせていました。

 そして、二人は、真のセレンディピティに出会う道を歩んでいきましたが、これは、

なかなか簡単にできることではありません。その原動力には、「ラジウムの発見を

誰の目にも明確にする」という「強い科学的信条」があったからだと思います。

 昨今の私たちは、その信条の大切さを少し忘れかけているのではないでしょう

か。それは、真のセレンディピティを得るために通過していく不可欠の「門」といえる

でしょう。

J0400792