風邪が抜けずに、夜中に咳きこんで目が覚めました。テレビをつける

と、アメリカの新大統領就任式が始まっていました。それはちょうど宣誓

式のシーンからでしたが、新大統領がフレーズを忘れたのでしょうか、

冷静に言いなおしていたことがまず印象的でした。

 続いて、就任演説がありました。静かに、そして、十分に考え抜いた事

柄を話し始めました。

 最初は、アメリカの現状認識についてですが、戦争で泥沼状態になり、

経済が破綻し、それらをリードしてきた人たちを信用することができなく

なりました。

 そして、この大変な社会の惨状からの「再生」を訴えました。そのため

には、国民のそれぞれが責任を持って対処していく、そのような時代が

始まることを強調しました。

 それらの詳しい内容については、新聞紙などで詳しく報じられていま

すので、これぐらいにしておきますが、私が驚いたのは、そこに集まっ

た200万人以上の群衆の多さでした。8年前の前大統領のときには、2

万人の抗議集会まで起こったというのですから、まったく異なる現象が

出現しました。

 新大統領が、どこに、その基盤をおけばよいのかを、みごとに示唆し

た現象だったのではないでしょうか。

 さて、一部には、もっと派手な演説を期待した方もいたようでしたが、

ここには、候補者から当事者になっている彼の心境が、そのまま現わ

れているのではないかと思われました。これから、直面するとてつもな

い難局を前にして、「これをどうするか、最初は徹底的に我慢してやる

しかない」、「大規模に破綻した経済をどのように再生させるか」、「どう

やって数100万人の新たな雇用をどう確保するか」などのことを考える

と、謙虚にできることから始めるしかない、このように思ったはずです。

 そこには、その責任を十分に自覚している新大統領の姿がありまし

た。その彼が、就任式に来られた200万人以上の方々に、「それぞれ

が、責任を持って、その新しい時代」をつくっていきましょうと訴えたの

ですから、それは、200万人はおろか世界中の方々を励ます訴えとな

りました。

 読者の皆様も、そして私も、その訴えを受けた一人であるといえま

す。「その訴えにどう応えるか」という新たな課題をいただいた演説で

もありました。

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