「産学交流会」が周南市のホテルで開催されました。

高専からは、10件余の講演発表がありましたが、私も、その一人でした。

以下、その内容を概括して紹介させていただきます。

講演題目は、「排水の水質浄化に関する研究」でした。講演の最初に「本日の

キーワード」として次の3つを示しました。

①ブレイクスルー

②余生から「誉生」へ

③臭いものには「蓋」

まず、「ブレイクスルー技術」についての説明から始めました。「ブレイクスルー技

術」とは、簡単にいえば、「生活を一変させる技術」のことをいうのですが、その規

模が大きいほど思いもよらない結果をもたらすことになります。

その概念を図1に示します。


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図1 ブレイクスルー技術の概念


この図からいろいろなことが考えられます。まず、科学と技術の関係ですが、20世

紀の後半において、その先端を求める論理と姿勢が強固に確立され、それが「常

識」になってしまいました。先端を求め、そこで新しい知見を得て、論文を書き、新

たな開発を行う、この指向がますます強まっています。

また、この先端指向に慣れてくると、そこで生きる術を学び、ある意味でそのこと

に安住する傾向が生まれるのですが、ふしぎなことに、その先端を求め続けるご

とに、その視野も狭くなっていくことに気付かなくなります。それどころか、「そのこ

とに一番詳しいのはおれだ」、「これについてよく知っているのは、おれを含めて3

人しかいない」などという硬直的な考えも定着するようになってしまいます。

あるとき、水産庁の研究所の方とお会いした時に、「自分は、河豚の研究をして

いるが、同じ研究をしている方は、2人しかいない」といっていたので、「アコヤガ

イについてはどうですか」と尋ねると、「おそらくいまはいないでしょう」といってい

ました。

これを聞いて、「そうであれば、素人ながらカキとホタテ、そしてアコヤガイの3つ

を同時に研究している人は、この日本には一人もいないのではないか」と思いまし

た。それでも、その結果を発表すると、専門家らしい人から、いろいろと、とやかく

いわれました。これは、とてもおかしなことですが、私が遭遇した現実でもありまし

た。

細かく専門別に枝分かれしていますので、その先端では、自称の専門家になろ

うとすればなれてしまうのです。

この先端化は、理系の学問でいいますと、物理、化学、生物のいずれかの個別

学問に特化してしまう傾向とも結びついてしまい、物理は生物がわかない、化学

が機械のことを理解できない、という現象を発生させます。いわゆる専門の「タコ

壷化」が起き、そこに安住する傾向も顕著になっていきます。

しかし、現実には、この個別化、先端化では、解決できない問題がいくつも発生

しています。

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