K:来週は,長野県阿智村でマイクロバブルセミナーが開催されますね.
 
 M:セミナーというよりも,講演や討論会もありますので,シンポジウムといった方

がよいですね.このシンポジウムのほかに,高専連携の先生方も集結しますので,

阿智村プロジェクトほか,いろいろな討議と検討がなされる予定です.


 K:シンポジウムでは,温泉再生の話をなされるそうですね.
 

 
M:これまでの昼神温泉に関する研究成果を発表させていただきます.昼神温泉

は水素イオン濃度が9.7程度のアルカリ単純温泉で比較的よい温泉質です.しか

し,このアルカリ温泉は,日本各地にたくさんあり,珍しいものではありません.とこ

ろが,秋田県には玉川温泉,山形県には蔵王温泉がありますが,前者は水素イオ

ン濃度で1.2,後者は1.5という特殊な酸性温泉です.このような強塩酸水による

酸性温泉は日本で数箇所しかなく,古くから名湯と呼ばれ,ここで病気療養をなさ

れる方も多数おられます.


 
K:そういえば,約2年前に,その蔵王温泉に一緒に行きましたね.
 
 
M:あのとき非常に印象深かったのは,朝風呂に入った後,身体が真っ赤になっ

て充血していたことでした.まっ白な温泉水でしたが,比較的長く入ったので,その

ようになったのだと思います.鏡に写る姿を見ておもわず吃驚しました.ところが,

身体がそうなっていたのに,何の自覚症状がありませんでした.このことを温泉宿

の方に尋ねると,皮膚が敏感な方には,そのようなことが起こるということでした.

 
K:そのとき,私は,比較的早く出ましたが,なんともなく,身体の変化は起こりま

せんでした.

M:そうでしたね.出浴後に,すぐに朝食をいただきにいきましたが,そこで,また

温泉入浴効果が現われました.朝食を前にして食欲が少しも湧いてこないのです.

Kさんは,そうでもなく,よく食べておられましたね.

 
K:ええ,普段通りの食欲で,普通に食べることができました.先生が,食事に口

をつけられないので,ふしぎに思っていました.

 
M:このときは,強烈な反応でした.これが,知覚神経刺激の結果かと納得しまし

た.身体が真っ赤になるほどの神経刺激を受け,それが脳内の満腹中枢を刺激し

て食欲をなくしてしまう,これが起きたと思いました.そういえば,Kさんも,同じこと

が昼神温泉で起こりましたね.

 
 K:よく覚えています.大好きなトンカツを注文したのですが,それを食べようとい

う食欲がわいてこなかったのです.あのとき,先生は,ビールとおつまみ程度のも

のを注文されていましたが,それを見て後悔しました.

 M:結局,しばらくして朝飯を食べる気が出てきて,それを食べてしましいましが,

あなたも,それを食べて,同じ結果になったのですから,その限りでは,落ち着くと

ころに落ち着きました.しかし,注目すべきことは,朝食やトンカツを食べられなかっ

たことであり,その食欲がわかないほどに,満腹感が出てきたことです.つまり,蔵

王温泉も,昼神温泉のマイクロバブル風呂も同じような知覚神経刺激によって,満

腹感が生まれたことです.じつは,これは大変なことなのです.

 K:そうでしょうね.つまり,温泉に入って,その刺激で,脳が影響を受けたというこ

ですよね.そこまではわかりますが,それが,どのような意味を持っているのです

か.

 M:脳が刺激を受けて満腹感が出てくるようになるということには,いろいろな意

味があるようです.一番の典型的事例は,マイクロバブルで鱧がおとなしくなり,凶

暴性がなくなったことです.

                                              (つづく)

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