メジャーリーグで大活躍されている「イチロー」さんは、ドラマ「白い巨塔」を愛し、

それをDVDで何十回と繰り返し見ておられるそうです.この話を聞いた時に,私た

ちが少年の頃に夢を与えていただいた「鉄腕アトム」の作者手塚治虫さんが,初め

てディズ二-の映画を観られ,それから何度も,その映画館通いが続きました.これ

を通じて手塚さんは,映画の観客ではなく,作り手の立場から映画づくりを考えられ

るようになったと仰られたそうです.

 おそらく,イチローさんも,ドラマの役者になってしまい,その心理状況を自分のも

のにしてしまうという観点においては,単なる視聴者には留まらない「何か」を求め

ておられたのだと思います.

 このように,自分の好きな作品を繰り返し見ていると,その演者や作り手の心理

に近いものが理解できるようになります.

 私の場合は,ホジュン(許浚)のドラマが,それに近いものではないか思っていま

す.

 さて,ホジュンのことを本格的に述べる前に,その結論を最初に述べておきます.

私がホジュンのドラマを何回も繰り返し観るようになり,その主人公であるホジュン

の生き方に影響を受けるようになったのは,それが私をめぐって起きる「マイクロバ

ブルの出来事」と非常によく似ていると思ったことにありました.

 若い頃のホジュンは,自分が役人の妾の子供であったころから,それを卑下して

自分の生き方を見失い,その結果,数々の悪行にも手を出してしまいます.

 その後,追われる身となるなかで,医者になる道を志すことで,この悪行から抜け

出していきます.それから,医院に勤めながら,水汲み,薬草取り,臨床と実践的な

修行を積みながら医者へとなっていきます.このとき,ホジュンは新参者ですから,

この過程で数々の嫌がらせや攻撃を受けます.

 ところが,ホジュンは,それらの被害を真正面から受けて弱りますが,しかし,そこ

から必ず這い出して,その攻撃を跳ね返していきます.しかも,その跳ね返し方が

中途半端ではなく,いわば「完膚なまでに跳ね返していく」のでした.

 その理由はどこにあるのか,それが気になるところですが,それに関しては,以

下の2点が重要だと思っています.

 ①ホジュンの勉強法における特徴は,その優れた実践に依拠していることにあり

ます.それは医者であることから患者を診るということを基本としています.この無

数に近い患者を診ることによって,その実践的な対応を身につけていきます.これ

は,後になって王様の病気を劇的に改善する時に非常に役立ちます.

 ②医者としての自己形成を行う過程で3人の師匠から学ぶことができたことです.

それは,単に患者を治すというだけでなく,「医とは何か,医者とはどうあるべきか」

という本質に迫る問題を学ぶことによって,師の教えを受け継ぐことを可能としてい

きました.

 ③上記の実践的な経験に加えて,文献に関する猛勉強や積極的な薬草開発をし

てきたことです.現場で多数の患者を診ていると,さまざまな問題に衝突し,その解

決を迫られるようになります.そのなかには,処方が不明の新しいことも少なくなく,

ここで先進国である中国の文献探しや適切な処方探しが始まります.後進国での

医学の未確立段階では,その先進事例を探すことが,まず,最初に重要なことでし

た.しかし,それでも十分な対応ができなかったこともあり,新たな薬草の開発や大

衆レベルでの病気の事例研究の必要性を痛感するようになります.

 こうして,実践的体験的事例,偉大な3人の現場医師,学問(文献)研究という3つ

の重要な仕事をこなしていくなかで,医師ホジュンが形成されていきました.

                                             (つづく)

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