夜は、赤とんぼ荘からのすばらしい夜景を堪能しました。鶏龍山、揖保川、竜野

市街が静かに佇んでいました。

 翌朝は、昼までに姫路に行けばよかったので、竜野市内を散策することにしまし

た。まずは、赤とんぼ荘から降りていくと、お年寄りのみなさんが幾人か集まってお

られました。看板には、街中の店内「お雛さま」をかざるイベントが開催されている

ことが示されていました。

 さて、最初の訪問地は竜野小学校、それから、「うすくち竜野醤油資料館」を見学

しました。播州平野で収穫された小麦、山間部からの大豆、揖保川の鉄分の少な

い水、赤穂の塩、これらの地域資源が組み合わされて「うすくち醤油」が生産されま

した。この醤油仕込みで食べるソーメンの「揖保の糸」は私の大好物の一つです。

 この後、男はつらいよ「夕焼け小焼け」のラストシーンに出てきた場所を探しまし

た。この映画では、竜野芸者の牡丹が、200万円を貸したある会社経営者に、その

金の返却を求めて上京してきます。しかし、この経営者は自分の会社を倒産させ、

その借金返済を棒引きにして居直り、牡丹の怒りを買います。寅も怒りますが、200

万円という大金についてはどうすることもできず、その代りに青観に絵を描いてくれ

と頼みにいきます。しかし、青観は、その申し出を断り、寅とは喧嘩別れとなりま

す。

 「汗水たらして一生懸命貯めたお金をだまし取られた牡丹がかわいそうではない

か。あんたは、それがわかるのか!」

 こういわれ、青観が、それに返答しようとしますが、ここで寅が一喝します。

 「描くのか、描かないのか!」

 日本画壇の最高峰が寅に見事に叱られたのですから、これは大変なシーンでし

た。もちろん、青観は、寅の申し出を受け入れることはできませんでした。

  こうしてラストの竜野のシーンになるのですが、寅が洗濯をしている牡丹を前触れ

なく訪ねます。牡丹は驚きながらも思いがけない客を自分の家に急いで連れていき

ます。そこには、青観から送られてきた大型の牡丹の絵が掛けられていました。

 牡丹は、その絵が送られてきた理由を理解していませんでしたが、寅は、その訳

をすぐに理解し、道に出て、東京の方角を選んで拝みながら礼をいいいます。青観

が寅の希望を叶えたことに対する心からのお礼でした。

 金には代えられない「芸術」と「思いやり」を示す感動的なラストシーンでした。

 この洗濯場から飛び出して、醤油の樽出しをする道を、ぜひ探し出し、寅さんがぽ

んぽんと手を合わせた思いを味わってみたいと思って、辺りを丹念に探したのです

が、その目当ての場所はどうしても見つけることができませんでした。映画では、

牡丹が洗濯をしているので、水路があり、その路地から抜け出たところが醤油の樽

出しをする道でしたので、水路と醤油工場を関連づけて探しました。

 しかし、この関連づけの探索が正しくなかったようです。帰って、どうして探せな

かったのかを調べるために、もう一度映画を丹念に見てみたら、その洗濯の場所

と樽出しの道はつながっておらず、途中の映像で、それをうまく切り替えていること

が明らかになりました。さすがに、山田洋次監督ですね。こうして詳しく調べないと

簡単にはわからないように映像をつなげていることが明らかになりました。

 結局、ラストシーンの場所は、私が探し歩いていたところとは別のところであるこ

とが判明しました。

 今度竜野を再び訪ねたときに、このラストシーンの場所を探し当てたいと思いま

す。動物の件、そして、この場所の件など今後の楽しみが増えた今回の「竜野行

き」となりました。

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