「おいしい水」については,さまざまな定義が試みられており,それらを総合する
と,その「おいしさ」には,次のような指標があるようです.
①ミネラル成分が適度に含まれる
②酸素が十分に含まれている
③10~15℃の水温である
④臭いがなく,金属成分を多く含まない
①は, その含まれるミネラルの多さで,軟水か硬水かに分かれます.我が国で
は,軟水が多く,「おいしい水」といわれる水のかなりのものが,これに属していま
す.
しかし,ヨーロッパでは,これが反対で,ミネラルを多く含む水が好まれ,「ビッテ
ル」などは,その代表格の水です.たまに,出張先で,この水を飲むことがあります
が,しっかりした重みのある味で,疲れた体には,よいような気がしています.
また,このミネラルは,その含まれている成分によっても分類され,カルシウムや
カリウムなどのイオンが苦みや渋みの成分であるマグネシウムイオンや硫酸イオ
ンに対して多く含まれることが,その「おいしさの指標」として示されているようで
す.
これに加えて,最近では,「味センサー」を用いて,おいしい水を評価する方法も
あるようです.この場合,このセンサーを用いると,ヒトの味覚よりも10倍ほど優れ
ているそうなので,さらにきめ細かい分類が可能となるようです.都甲潔氏の分類
によれば(『水』,NTS社第11章),ミネラルウォターのテイストマップは,「ピュア」に
対して「ヘビー」,「ソルティー」に対して「ビター」の4種類の指標が示されています.
そして,それぞれの指標が次のように意味づけられています.
ピュア:無味ということ
ソルティー:ややナトリウム系の味
ビター:ややカルシウム系の味
「ヘビー」については特別の説明がなされていませんが,ピュアの対極にあるとす
ると,しっかりした味であることが推測されます.
この分類指標に従いますと,ピュアな味の代表は,「南アルプスの天然水」,ヘ
ビーな味は「ビッテル」,「ソルティ」の味は,「安曇山水」,「六甲のおいしい水」,そ
して,「ビター」な味の代表は,「エビアン」や「森の雫」なだがあるようです.
全体としては,「ピュア」な水が多く,これが南水に近い味で,「ヘビー」で「ビター」
な味が硬水に分類されるようです.
②の酸素が多い水には,「さわやか感」があり,それを想像するには,山の奥で
流れてくる水がよいでしょう.
③は非常に重要な因子であり,水は温度によって三様に変化します.それは,個
体,液体,気体の3つですが,同じ液体でも,その分子構造が温度によって微妙に
変化し,それが味にも影響していることが考えられます.
よく冷やして飲むと,どこかの名水と水道水では,ほとんど,その「おいしさ」に差
異がなかったという話をよく聞きますが,それだけ,水を冷やすとおいしくなり,微妙
な問題にもなります.それに,個人差もありますので,なかなか画一的に取り扱うこ
とができないことも,やっかいなことといえます.
④の臭いや金属物質の問題も重要です.最近,西日本の浄水場では,臭いを発
生する植物プランクトンが発生し,それがかなりの問題となっています.また,ダム
貯水池の下層が無酸素化し,その結果として,大量に金属物質が溶出する事例も
増えています.
これらは,飲み水の味に影響し,飲む人の健康問題にも関係しますので,それに
も配慮する必要があります.
(この稿つづく)
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