最初の「ブレイクスルー」を遂げた「錦」の「酒造り」ことを考えているうちに、昔、つ

くば市の産総研を訪問したときのことを思い出しました。このとき、ある研究者を紹

介されました。その方は、質量分析をなされている方で、そのときに、アルコール濃

度の度合と水の微細構造に関する結果を紹介していただきました。これによれば、

アルコールの濃度差によって、水分子とアルコール分子の組み合わせが異なると

いう説明がなされていました。

 アルコールの濃度は、ビール、日本酒、ウイスキーとなるに従って濃くなります。

それぞれ、アルコールと水のブレンド割合が異なりますので、それらの分子の組み

合わせ構造が異なるというのです。日本酒の場合、ブレンドするアルコールの割合

は約30%ですから、その組み合わせは、サンドイッチのように模式化されていまし

た。すなわち、水とアルコールの分子が
サンドイッチのように層状になって重なり

合っていることを思い浮かべるとよいと思います。

 このときに、用いられたアルコールは、「ブタノール」というものでしたので、私は、

次のように、その研究者に質問しました。

 「このブタノールを数滴入れた水の中で、マイクロバブルを発生させ、その濃度差

でマイクロバブルの発生状況が変化すれば、その分子構造に何らかの影響を与え

たことになりますね?」

 この研究者の返事は肯定的なものでした。

 そこで、さっそく帰ってから、その実験を行いましたが、結果は、ブタノールの濃度

差によって、マイクロバブルの発生状況が変わるというものでした。つまり、それら

の分子構造に影響を与えているという結果を推測させるものでした。

 村重酒造のみなさんとの話し合いにおいても、これに関することを紹介させてい

ただきました。これから、そのミクロな世界に切り込んで、それを詳しく調べてみる

必要があると思いました。

 それから、村重酒造のみなさんには、第8回産学官連携推進会議(6月20日、

21日、京都国際会館)におけるW受賞酒「錦」の出品を協力をしていただくことにな

りました。試飲も可能なようで、みんさん、さぞかし喜ばれることと思います。また、

この村重酒造は、今年が50周年だそうで、その記念と今回のW受賞を兼ねて、6

月28日に岩国市で祝賀記念の会が開催されることになりました。その席で、今回

の「酒造り」について私からも講話をさせていただくことになりました。

 いろいろとおめでたいことが続くので、みなさんの目が以前と違って輝いていたこ

とがとても印象に残りました。

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