「芸術は驚きである」といった国木田独歩の言葉は,「マイクロバブルは驚きであ

る」というK3さんの思いと重なって融合したのでしょうか,「芥川龍之介が生きてい

たら,きっと,マイクロバブル入浴に驚いたことでしょう.芥川は,吃驚するような新

しいことに,とても興味を示された方でした」,独歩に続いて,彼は,芥川のことまで

言及し始め,その「驚き」の大切さを語ったのです.これは,マイクロバブルに触発

されたK先生の思いが,独歩や龍之介に結ばれたのではないかと思いました.

 以来,Kさんのマイクロバブル入浴生活が,着実に発展していきました.1日1回が

2回,3回へと,それから朝の入浴も普通になっていきました.この習慣は,北の地

に帰られた後も,次のように続けられました.

 朝は,マイクロバブル風呂に入って,気力十分になってから職場に向かわれま

す.そして職場での仕事が終わって帰ってくると,すぐに,疲れをいやすために2回

目の入浴をなされます.三度目は寝る前で,この入浴で,寒い冬の夜も身体を温か

くしてぐっすり眠れるようになりました.

 こうして,K家にとって,マイクロバブルは,生活の奥底に深く入り込み,定着して

いきました.この過程で,マイクロバブルは,身体的改善に寄与したのみならず,精

神的仕事としても重要な変化をもたらしました.

 その第1は,マイクロバブル技術の進展を観察し続け,それを文明的,あるいは

文化的に考察し,記録に残す仕事をなされるといわれたことです.これは,究極の

「マイクロバブルウオッチャー」であり続けることが必要になります.その後も,マイク

ロバブル技術は,急速に発展していますので,その都度,悲喜こもごもの吃驚現象

も含めた粘り強い観察と分析が必要になります.マイクロバブルは科学と技術の分

野を基礎としていますが,それが実践的に適用される場は社会ですから,そこに

は,新しい社会経済的価値を有無出す現場があり,それを分析するには,社会科

学や文化人類学的思考,さらには未来学的見地も必要になりますので,この仕事

は容易なことではありません.そして,この仕事は後世に語り続ける仕事でもありま

すので,息の長いスパンを有するものでもあります.

 第2は,その生きた実践記録を,現役の学生たちに熱く語り続けていることです.

先生は,毎朝のホームルームで学生たちに,機会あるごとにマイクロバブルのト

ピックスを紹介されるそうです.それを学生たちがとても興味を示し,喜ばれるそう

ですが,この行為は,マイクロバブルの理解者を育てることでもあります.彼らは,

技術を仕事にして未来において活躍する方々ですから,このような生きた教材を

語れる文科系の先生は非常に貴重な存在といえます.この未来を語り継ぐK先生

に育てられた学生たちが,世の中で活躍するようになることを考えると,これはとて

もすばらしい仕事といえます.

 未来は,彼ら「若者たち」によって築かれるものであり,その意味は小さくありませ

ん.
                                         (この稿つづく)

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