5月15日付けの日刊工業新聞・「深層断面」において,再び植物工場に関する特

集が組まれました.その記事のタイトルで目を引いたのが,「植物工場は新産業に

なれるか」というものでした.

  この記事をよく読んでみますと,現在の植物工場の問題点が明らかにされていま

す.その第1は,植物工場のプラント建設費が非常に高くて,当初は赤字を出さざ

るを得ない,このようなところが多いようです.問題は,その初期投資をいかに早く

回収し,黒字へと転化するかにあると思います.

 第2は,価格競争の結果,価格破壊が起こる恐れがあると指摘されていることで

す.葉野菜であれば,200~300円で売らざるを得ない,そこまでコストダウンして収

益が上がるかということになりますが,これについては野菜の量と質に関する問題

があります.

 これらの問題は野菜に限らず,多くの食品やその他の商品においても同じことが

いえます.

 たとえば,岩村もみじ屋のもみじ饅頭を例にとってみましょう.この店は創業100年

にもなる老舗ですから,その饅頭づくりに拘ってこれらました.数は少なくてもよい

から,北海道産の高い小豆を用い,おいしい饅頭づくりを伝統としてきました.なん

とか,この小豆を使いながら,もっとおいしい饅頭をつくりたい,これが店主の願い

であり,信念でもありました.その彼が,マイクロバブル技術を,その饅頭づくりに使

いたいと熱心に頼んでこられましたので,その製法を教えていただいて,使えるとこ

ろにはすべてマイクロバブルを使えるようにする,そのような装置の導入を薦めさ

せていただきました.当然のことながら店主もこだわりの職人ですから,その提案を

受け入れ,その腕が試されることになりました.

 その後,何度か間隔を置いて,その拘りマイクロバブル饅頭を食べましたが,そ

の味が徐々に進化してきたことを確認してきました.素材の味を活かした美味しさ,

ぱさぱさ外皮をしっとり外皮に変えたこと,それを表現すると無条件に美味しいとし

かいいようのない「美味しさ」が醸し出されていました.

 ところが,この二大特集記事のなかに,その「美味しさ」に関する文字も概念も出

ていないのはなぜでしょうか?食べるものですから,「美味しさ」が一番の価値のあ

る概念であるはずなのに,それが論じられていないのはなぜか? この疑問が湧

いてきました.

 奇妙なことに,これをもみじ饅頭にたとえますと,「売れるかどうか」,「コストを下

げられるかどうか」,「設備投資の赤字を解消できるかどうか」,「価格競争で収益

がなくなったらどうしようか」,このようなことを心配している段階ですから,そうであ

れば,もみじ饅頭の製造も販売もすぐにできなくなってしまうのではないでしょうか.

業界が違えば,このような違いが出てもよいのかもしれませんが,それにしても,

その常識が通用していないことには不思議さを感じています.

 すでに,このブログでも紹介させていただきましたが,この岩村もみじ屋の饅頭が

約2年を経過してじわじわと売れ始め,その味をしったリピーターが,どんどん再注

文を行うようになりました.たしかに,これだったら美味しい饅頭としてお土産に持っ

て行けると私も確信を持つようになり,それを買いに行き,これまた何度も売り切れ

になっていました.これが,美味しさの証明・評判というものではないでしょうか.

 ですから,植物工場が新産業になれるかどうかは,この岩村のもみじ饅頭のよう

な野菜を作れるかどうか,これにかかっているのではないでしょうか.そのために,

何をすればよいのか,その知恵を絞り,工夫をすることが求められているのだと思

います.

 そこで,植物工場において,いかに美味しい野菜をつくるか,しかも,安全で,低

コストでそれが実現できるとなると,それは最高の目標になります.

 この「ブレイクスルーをどう実現するか」,日刊工業新聞における第3番目の特集

があるとすれば,このテーマになるような気がしています.

 その昔,1998年7月24日付の日刊工業新聞の一面トップ記事に,「世界最小水準

の気泡」と題して,私のマイクロバブル発生装置のことが報じられました.これが契

機となり,マイクロバブルが全国的に知られることになりましたので(このときの詳し

い経緯は,拙著『マイクロバブルのすべて』に詳しく述べれています),今から思え

ば,大変感謝の記事となりました.ここに,あらためて厚く御礼申し上げます.

                                          (この稿つづく)

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