伊藤氏は,我が国のベンチャー不振の理由を次のように指摘されています.
①起業家を輩出する風土が希薄化しつつある.
今回の経済危機を契機にして,ベンチャーへの投資が,ホースの先をクリップで
とめるように無くなってしまったこと,その結果として,起業家を輩出する気運すら
消えてしまっていることを危惧されています.
②VC(ベンチャーキャピタル)への資金流入パイプが小さい.
VCはベンチャー企業を支援するための投資会社ですから,その資金パイプが小
さいのであれば,VBが発展するわけがありません.つい最近まで,VBを育てるこ
とが必要,独創的な革新技術が重要と叫びながら,なぜ,このような沈滞を呈する
ようになってしまったのか,そのことをよく考えてみなければなりません.
今回の経済危機は,日本の製造業が外需頼みで,内需をほとんど生み出さな
かったことにあるといわれています.これまで,日本を引っ張ってきた自動車が国
内で売れなくなり,今後も低価格の自動車との競争が厳しく行われるといわれてい
ます.その意味で,自動車においては内需を生み出す,技術もVBも徐々に必要で
はなくなってしまう恐れがある,これが現在を危惧するひとつの側面ではないでしょ
うか.自動車がそうであれば,デジカメやテレビについても同じようなことがいえま
す.
こうなると,「『創造的破壊』の先兵たれ!」と鼓舞することしかないのかなとさえ
思えてしまいます.それを,素直に,そして善意に前向きに受け留めるのであれ
ば,それは,これまでとは異なるもっと洗練され,粘り強い起業家が生まれてくるこ
とを期待することではないかと思うしかありません.
ほかにも,③投資を回収する選択肢が少なすぎる,④少額しか投資せず,協調
VCにしかならないという投資行動にも問題があるとされていますが,もともとの根
本問題は,VC側にあるのではなく,起業家であるVB側にあるのではないでしょう
か.
いずれにしましても,起業家精神とは何かが根本的に問われている,それが今日
の重要な特徴といえることだけは間違いないことのように思われます.
(この稿つづく)
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