宍道湖に着く前に,少し時間があったので,出雲大社の近くにある「そば屋」の

「荒木屋」に寄ることにしました.これまでに,全国各地のそば屋を訪ねましたが,

私は,この荒木屋の「そば」が一番気に入っています.久しぶりですので,5段重ね

の割子そばをいただきました.このそばは,お椀が5段になっていて,それぞれ「や

くみ」が異なっていて,お椀ごとに違った味のそばが食べれることに特徴がありま

す.お客さんの行列ができるほどになったからでしょうか,以前ほどの味のキレが

なくなっているように思いましたが,それでも大変美味しくいただくことができまし

た.

 午後からは,漁協青年部のみなさんが待つ,実験場を訪れました.約1年ぶりの

視察となりました.

 まず,最初に注目したのは,マイクロバブル水槽における水の質が,対象水路の

水とまったく異なっていたことです.透明度や水の輝き,水槽に付着した藻の量な

どがが大きく異なっていました.この水路は,幅1.5m,長さ10m程度ですが,ここに

入れられた水のなかに連続してマイクロバブルを注入することで,よい水の精製が

なされたのだと思います.これだけでは,読者のみなさまには,よくわからないのか

も知れませんが,よい水かどうかは,その「輝き」によって,ある程度見わけがつく

ようになりました.

 第2は,その成長率比較です.隣の対象水槽においては,単に宍道湖の水を取り

入れ循環がなされているのみですが,ここと比較すると,そのシジミの体重差で1.6

倍にまで到達してきました.この体重差は,小さい貝ほど顕著であり,稚貝に対して

マイクロバブルの効果が出やすいという,これまでの結果と類似しています.今回

は,最小殻長が10mmという会で実験を行ったために,約1.6倍にまでしか至らな

かったのだと思いますが,さらに小さい稚貝から実験を行うと,従来の体重差での

「2倍」という数字に接近していくのだと思います.

 しかし,この1.6倍という数字でも立派なものです.近年は,宍道湖のシジミが小粒

になり,その多くはSサイズ(10~12)mmだそうです.つまり,昔ほどシジミが育たな

くなり,しかも量的にも少なくなり,一日で最大に採れる量は90kgと定めれていま

す.これは,かつての収穫量の半分にも満たない量であり,その分だけ,みなさん

の生計も苦しくなってきていることを示しています.

 第3は,稚貝の生育率です.これでは,圧倒的な差がでました.マイクロバブル水

槽とそうでない水槽では,なんと約15倍の差が出ていました.つまり,マイクロバブ

ルを与えていない水槽では,産卵しないか,産卵しても育たないという,現在の宍

道湖の弱点を反映した結果を示しています.それに対し,マイクロバブル水槽では

多数のシジミが数ミリメートルの稚貝にまで育っていたのです.これは,半人工的

な,すなわち,宍道湖も湖畔で,宍道湖の水を利用しながらシジミの自然ふ化と養

殖が可能になることを示した非常に重要な結果であることを意味します.

 「大変重要な,そして初めての半人工的養殖を成し遂げたみなさんに感謝する

とともに,そのことに自信を持たれて,今後の稚貝養殖の道を切り開いてください」

このように,その結果についてのコメントを述べさせていただきました.

 これらの結果は,これから,宍道湖のシジミ漁関係者にも少なくない注目を集める

ようになると思います.

 さて,視察後には,懇親会を開いてくださり,またまた,美味しい蕎麦を御馳走に

なりました.荒木屋とは異なる味でしたが,この蕎麦の味もなかなかのものでした.

夕方,みなさんとお別れの挨拶をし,風渡る宍道湖の湖畔を通りながら,帰路につ

きました.漁協青年部のみなさんによる1年の地道な努力が実った結果を視察で

き,私も大変励まされました.

                                         (この稿つづく)

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