昨日のNHKスペシャル,「立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む」はとても印象深い番組でした.その内容は,一昨年膀胱がんの手術を受けたジャーナリストの立花隆氏の手術やその後を取材し続けた様子を紹介し.彼が本質的に「がん」と向かい始め,次の問題意識を示すことで始まります.

 「人類はなぜ,がんという問題を克服できないのか?」

 これを踏まえて,彼は世界中の「がん専門家」による研究の最前線を追跡し,がんという病気が生命誕生の謎と深く結び付いてきていることをしります.

 みずからのがんの再発率は80%ていどあると語る彼は,がんを「只者ではない」,一度がん退治法を開発しても,それをすり抜けていくのががんであり,一筋縄ではいかない「エイリアン」だと説明します.

 ジョンポプキンズ大学のセメンザ教授によれば,がんの中央部は低酸素状態となり,そこには「HIF-1」という物質が存在しているそうです.がんの成長にともなって,このHIF-1も増え,移動する能力も高まります.そして低酸素の状況でも耐えて生き残れるがんだけが存在するようになったそうです.

 古代の地球では,この低酸素状態の環境下にあり,そこで生命が生まれてきたことから,この低酸素状態においてもがんの生命力が保てる問題は,生命の期限にまで遡ることに結び付いていきます.

 そして,このHIF-1がなくなると「がん」が死んだという発見もなされます.また,HIF-1は,低酸素であっても対応できる能力を表す指標でもあり,あらゆる生物が持っている生命活動の基本をなす物質であり,動物の進化の過程で保存されてきたものだそうです.

 また,アインシュタイン研究所のポラード教授は,マクロファージが「がん」の成長の手助けをしていることを発見しました.

 このマクロファージは,裏切り者であり,死んだがん細胞を食べてしまいますが,生きている場合には,逆にがんの移動の物質を生み出し,がんの成長や移動の通り道を作る手助けまでしてしまい,これによって正常な細胞ががん細胞になってしまうのだそうです.

 結果的に,正常な細胞とがん細胞の分離ができず,がんは,「半分自分で,半分エイリアン」と立花氏によって説明されていました.

 こうして,がんの真の姿が明らかになればなるほど,それをどう克服すればよいのか,それが難しくなっていく,つまり出口の見えないトンネルに入っていくような状況が見えてきているのです.

 立花氏の思索はより根源的な方向に向かっていきます(つづく).

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