さらに,クラーク教授は,がんは「幹細胞」であると説きます.この幹細胞とは,根源となる細胞のことで,この細胞を基礎として分裂し,子孫の細胞を生み出す仕組みが説明されていました.

 そして,抗がん剤は,この幹細胞を攻撃することができず,その子孫のがん細胞だけしか殺すことができないようです.つまり,がん細胞は生命の根源ともいえる幹細胞に非常によく似ているのです.

 この細胞は,京都大学の山中教授が見出したiPS細胞ともよく似ていて,そのなかの4つの遺伝子のうちの2つが「がん遺伝子」でもあると説明されていました.iPS細胞によって細胞が再生されることと「がんになる」こととはよく似ていて「紙一重の関係にある」というのです.

 これらの最前線における研究者の証言を踏まえると,がん克服は容易ではなく,50年以上もかかるという見解が明らかになっていきました.この見解は,どこかの「楽観的な未来予測」とはかなり異なっており,リアルな研究成果の反映から導かれたものでした.

 最後に,立花氏は,本番組の結論に迫っていきます.がんは,細胞とDNAの病気であり,二人に一人ががんになり,三人に一人ががんで死ぬ時代を迎えようとしているといい,多くの人々が「がん」とどう向き合うか,それが問われれているのだと語りました.

 そして鳥取県のある「診療所」の患者さんの「自然に死にたい」という証言が示され,「いのちは不思議な力を持っている」,「いのちはすごいな」,「人々には,それぞれ違う死に方がある」というT医師の言葉も紹介されます.

 そして,立花氏は,次のように番組を締めくくる言葉を残します.

 「自分が生きている間に,人類ががんを克服することはできないであろう.そのことを理解しておくと,自分が死ぬと分かっていてもジタバタすることはないであろ う.これは,生命が持っている避けられない運命であるから,それと向き合ってどこかで折り合いをつける必要があるように思う」

 「人間は死ぬ力を持っている,あるいは,死ぬまで生きる力を持っているというのが正しいかもしれない」

 「死ぬまで生きることが,がんを克服することではないかと思う」

 そこには,死を覚悟しながら,ジャーナリストとして,がん研究の最前線の科学的成果を分析し,それを踏まえた見通しを冷静に述べるという,すさまじい姿があり,心に強く残りました.

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