二次会は,周南市の駅の近くのおでん屋「竹の第」に行きました.この「第」とは「屋敷」を意味します.有名な屋敷では,「聚楽第」があります.

 この粋な名前を付けたご主人は日和佐さんであり,かの有名な四谷「傳魚坊」という「おでん屋」で長年活躍されてきました.

 その日和佐さんが故郷に「錦」を飾られ,この「竹の第」を造られました.日和佐さんは,日本酒造り,名酒を出すことで非常に有名な方で,この方に日本酒を語らせたら他に右に出る方はいないといわれています.

 また,この店で出される「おでん」が普通ではありません.そのほとんどが,創作「おでん」といいましょうか,ご自分で毎朝,そのおでんのネタを作られています.それが他のおでん屋にはない,オリジナルのおでんなのです.

 さらに,おでんの汁も毎朝作られ,その材料にも惜しげもなくよいものを投入されています.

 さすがに,大手証券会社Hさんも,この創作おでんには吃驚されたようで,初めてのおでんをありがたく賞味されていたようでした.

 その日和佐さんとは,ご自慢の日本酒造りの話になりました.この話題になると,彼の口調が一段と強まります.

 「先日,村重酒造に行ってきました.今年も,新酒『錦』の製造が始まっていました.詳しく見学させていただきましたが,酒造りというのは本当に大変な作業ですね.そのことがよくわかりました」

 「そうですか.酒造りは本当に奥が深いんですよ.私は,全国の酒屋を周り,いろいろな杜氏と酒造りついて話をし,そして実際に酒造りを行ってきました」

 「それは,なかなか容易なことではないですよね.どうして,そのプロ中のプロになられたのですか?」

 「いやぁ!それは,先生,まず,酒造りを知るところから始まります.自分が飲みたい酒,作りたい酒をどうやったら造っていただけるか,ここを杜氏さんとひざ詰めで話し,そして酒を実際に造ってもらう,これができないとだめですね」

 「それは誰もができることではありませんえ.それから,実際の酒造りは,米作り,洗米,蒸し,麹づくり,酒母,仕込み,絞りと続く過程は,本当に複雑で『技術と感』の両方が必要とされていますね」

 「そうですよ,大人たちが何カ月も泊まり込んで行う緻密な大作業です」

 「その仕込みだけでも何段階かがあり,そのそれぞれの過程で,泡のでき方がみな違うそうですね」

 こういうと,「待ってました」とでもいいたかったのでしょうか,自作のご自慢の日本酒を持ってきて,その泡の説明を始めました.

 

 水 

 岩

 高

 落

 玉 

 その酒のラベルには,この6文字が書かれていました.「これは何と思いますか?」と尋ねられても,よくわからないままで,その理由を逆に教えていただきました.

 「先生,これは仕込み段階の泡の様子を表した文字です.筋は,筋状にできる泡,高は泡が盛り上がって厚くなることを示し,玉は,大きな半円状にできる泡のことをいいます」

 「そうですか,仕込みだけで,そんなにできる泡が違うのですか.その泡の状態を示す6文字を酒のラベルに入れたことは粋ですね」

 こういうと,ご主人はとても喜ばれていました.もちろん,Hさんともいろいろな話をさせていただき,とても有意義な時間を過ごしました.

 帰るときには,わざわざ日和佐さんが道路まで出られて見送っていただきました.その姿には,彼の気持ちが,そのまま現れていたように思いました.プロとの話は面白いですね.

 こうして,もみじ饅頭から始まって,竹の第まで,長い一日が終わりました.Hさんのおかげで,とても充実した一日を過ごすことができました.

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