姫路市夢前町を出て,岩国市にある村重酒造についたのは夕方でした.つい10日前にも訪問していましたので,より親近感が湧いていました.

 日本一,そして世界一の日本酒に対して,みなさんがどのように反応するか,とても楽しみなことになりそうです.

 まず,到着するとともに,あの大杉玉の玲瓏(れいろう)に注目されました.村重酒造としては,世界一の大杉玉を精根こめて造ったのですから,このようにベトナムのみなさまにも熱心に見ていただくことはとてもうれしいことです.

 みなさんは,この珍しい杉玉の前で記念撮影をなされていました.そのとき,村重酒造の方がちらっといわれていましたが,どうやら,この杉玉を「ギネス」に申請し,世界一認定をしていただこうかという意向もあるようでした.

 昔から,新酒ができると,この杉玉を軒先に飾って,そのお知らせとお祝いをしてきたそうです.また,村重酒造としては,新酒ができたことを神様に報告し,感謝するという思いも込められているようです.

 一行は,精米から仕込みまでの一連の見学ルートでの説明を受けていました.しかし,私は,いつの間にか,あの麹と酒の匂いに,ついつい引き寄せられたといいましょうか,その臭いの素である酒の絞り機のところまで先に行ってしまいました.

 やはり,ここが臭いの源であったかと思いながら,その中をみると,酒粕を袋に入れる作業をされていました.

 「本当に,よい香りですね.先日の酒粕とは違う臭いのようですが?」

 「はい,これは,今絞った大吟醸の酒粕です」

 「あの『錦』の酒粕ですか?」

 「そうです」

 そういいながら,ビニール袋に入れている酒粕は,ドロドロ状態の,今絞ったばかりの粕でした.これを見て,思わず味見をしてみたくなりました.

 私は,くいしんぼうのせいか,何でも食べてみて味を確かめたいという習慣があります.

 「少し,いただいてよいですか?」

 「どうぞ,どうぞ!」

 ひとつまみさせていただいた酒粕は,発酵された麹そのものといってよく,それを口に入れて吃驚しました.あの何とも言えない香りが口に中に広がり,独特の美味しい酒の味がしました.

 もちろん,こんな格調高い酒粕を食べることは,生まれて初めての経験でした.

 そうこうしているうちに,みなさんがやってきました.一行を案内してきた杜氏の日下さんは,「やはり,ここにいたのですか?」という顔をされていました.

 そして,ここでまた,吃驚することが起きました(つづく).

J0401533